局所温令感

2021-02-19 オフ 投稿者: SHANY™
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常の居住空間では、不均一放射、ドラフト、上下温度分布、床温度によって身体の局所に温熱的な不快を感じる問題が頻繁に起こる。代謝量が高い場合や衣服を着込んだ場合には、温熱環境に対して鈍感になり、局所不快感のリスクが少なくなる。また、居住者は全身温令感が中立よりも涼しい側にあるときにより局所の不快に対して敏感になり、逆に暖かい側にあるときには局所の不快に対して鈍感になる。


ここで定義される局部不快感の許容値は、着衣量が0.5 ~ 0.7 clo(※ 1 clo = 0.155 m2·K/W)の軽装で、代謝量が1.0 ~ 1.3 met(※ 1 met = 58 W/m2)程度の静穩状態を想定したものであり、また、全身温令感が中立に近いという前提条件で定義されている。表1は、局所不快感のそれぞれの要因に対して予想される不満足者率を示したものであり、これら全てを同時に満たす必要がある。

Table 1. Expected percent dissatisfied due to sources of local discomfort
Radiant AsymmetryDraftVertical Air Temperature DifferenceWarm or Cool Floors
< 5%< 20%< 5%< 10%

【1】不均一放射(RADIANT TEMPERATURE ASYMMETRY)


部屋の各表面温度がそれぞれ異なる場合や、直達日射の影響により人体周囲の放射場は不均一となり、許容限界を超えると不快感を引き起こす。通常、特に天井が暖かい場合と、壁が冷たい場合に不快感が増す。放射の不均一性は、微小面放射温度のベクトル差を用いて表される。図1に暖かい天井(Ceiling Warmer than Floor)・冷たい天井(Ceiling Cooler than Floor)、暖かい壁(Wall Warmer than Air)・冷たい壁(Wall Cooler than Air)による不均一放射に対する不満足者率の関係を示す。暖かい壁面に関しては不快感が少なく、壁付きのパネルヒーターが有効であることがわかる。また頭寒足熱の言葉とおり、冷たい天井に関しても不快感は少ない。表2は、不均一放射の許容限界値を示したものである。

Fig 1. Local thermal discomfort caused by radiant asymmetry

Table 2. Allowable radiant temperature asymmetry
Ceiling Warmer than FloorCeiling Cooler than FloorWall Warmer than AirWall Cooler than Air
< 5 °C< 14 °C< 23 °C< 10 °C

【2】ドラフト(DRAFT)


夏期には、気流を増やすことによって涼感を得ることができるが、空調時における必要以上に強い気流は局所の不快を引き起こすものであり、ドラフト(draft)を生ずる。ドラフトとは、「望まれない局部気流」と定義される。平均風速、空気温度だけではなく、乱れの強さ、代謝量、着衣量がドラフトによる不快感に影響を与えることが指摘されている。


ドラフトによる予想不満足者率(Draft Rate, DR)は、下式より定義される。この値が表1に示した「< 20 %」になるようにしなければならない。室温設定が高めの環境下でパーソナル空調などを採用するような場合には、居住者が気流速度を制御することが可能となるため、気流速度の許容限界はこの限りではない。

\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \textrm{DR} = &\left \{ \left ( 34-t_{a} \right ) \times \left ( v-0.05 \right )^{0.62} \right \} \\ &\times \left ( 0.37 \times v \times T_{u} + 3.14 \right ) \end{aligned}\end{array}

【3】上下温度分布(VERTICAL AIR TEMPERATURE DIFFERENCE)


屋室上部が高温で床近傍が低温になるような室内空気の温度成層は、熱的な不快感を生ずる。図2に、居室上部が高温で床近傍が低温になるような場合の上下温度分布による不満足者率を示す。温度成層が逆転することはまれであり、むしろその場合は居住者にとって快適な条件となる。
室内上下温度分布について、ASHRAE Standard 55-20171[1] ANSI/ASHRAE Standard 55-2017 : Thermal environmental conditions for human occupancy, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, 2017.では在室者のくるぶしの高さと頭の高さの温度差が3 °C以内になることを推薦している。立位の状態では、くるぶしの高さが0.1 m、頭の高さが1.7 mということになる。椅座位の状態では、頭の高さは1.1 mである。室内上部からの温風による対流式暖房の場合には、上下の温度差が発現することが多いが、断熱・気密性能の高い居室であれば、冬期でもこの上下温度分布の推薦条件を満たすことができる。窓部で冷却された空気が床部に下降してくる現象(コールドドラフト)にも注意が必要である。

Fig 2. Local thermal discomfort caused by vertical temperature
differences


 【4】床温度(FLOOR SURFACE TEMPERATURE)


床表面温度が極端に高温あるいは低温である場合にも、局部の不快を引き起こす。靴を履いている居住者にとっては、床表面の仕上げ材の種類よりも床表面温度が特に重要である。ASHRAE Standard 55-20172[1] ANSI/ASHRAE Standard 55-2017 : Thermal environmental conditions for human occupancy, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, 2017.では、室内の床温度は19 ~ 29 °Cの範囲(図3参照)とすることが推薦されている。これらの推薦値は、靴を履き、椅子に座ることを想定したものである。床暖房装置などがある家庭で床に直接座ったり寝たりする場合には、低温やけどの原因となるような体温よりも高い温度での使用は好ましくない。

Fig 3. Local thermal discomfort caused by warm and cool floors


[1] ANSI/ASHRAE Standard 55-2017 : Thermal environmental conditions for human occupancy, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, 2017.


Written by Sihwan Lee
[BSRG™, Shinshu University]

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