換気の目的
2020-06-26換気とは、建築空間において室内空気と外気を計画的に交換することである。その主たる目的は、室内空気中に滞留する汚染物質(例:二酸化炭素、揮発性有機化合物、ホルムアルデヒド、浮遊粒子状物質等)を排出し、外気により希釈・置換することで室内空気の清浄度を維持することであり、居住者の健康の保護および快適性の確保を図る。各種室内汚染物質には、建築基準法や厚生労働省指針等に基づく許容濃度が設定されており、これらの許容濃度を下回るように維持することを目的として、必要換気量(換気回数)が定量的に規定される。
通常の都市域や郊外住宅地では外気の質が十分に良好であることが多く、外気をそのまま導入することで室内空気質(IAQ: Indoor Air Quality)の維持が可能である。しかしながら、幹線道路沿いや工場周辺等、大気汚染が顕著な立地条件においては、外気自体が有害物質を含む可能性があるため、HEPAフィルタや化学吸着材等を用いた外気浄化措置を講じる必要がある。
また換気は、汚染物質の排出に加え、以下のような補助的・副次的な機能も担う。すなわち、居住者の呼吸や燃焼器具の使用に伴って消費される酸素の供給、調理・洗濯・入浴等の生活活動に起因する過剰な水蒸気の除去による湿度制御、また、室内発熱源(照明機器、人体、電気機器等)による熱の排出などである。
なお、換気としばしば混同される概念として「通風」及び「漏気」があるが、これらは明確に区別されるべきである。「通風」は、主として夏季における体感温度の低下および冷涼感の付与を目的としたものであり、開口部の開放等によって高速度気流(概ね1.0 m/s以上)を得ることにより効果を発揮する。これに対し、換気は低速度気流(概ね0.2 m/s以下)で気流を感じさせず、かつ空気質制御を目的として設計される点で異なる。また、「漏気」は、外部風圧や温度差による非計画的な隙間風であり、エネルギーロスや換気効率の低下を招く要因となるため、断熱・気密設計上の管理対象である。
Ventilation | |||
気流を感じない程度 |
気流を感じる |
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設計時に計画できる |
気流の向きは気にしない |
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Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Tokyo University of Science]