必要換気量
2020-06-26必要換気量の算定の際は、室内を完全混合状態(perfect mixing)であると仮定することが多い。これば瞬時一様拡散とも言われ、室内にある汚染質(contaminant)が発生した場合、発生した瞬時に汚染質が空間全体に広がり、空間の至るところで濃度が同じになるような拡散状況のことを意味ずる。室内の平均的な汚染質濃度を予測したい場合には、計算が簡便なのでしばしば完全混合状態を仮定する。例えば、ある部屋で汚染質発生量が M [m3/s]であり、その汚染質の許容濃度が C [m3/m3]、取入れ外気の濃度が Co [m3/m3]であった場合、完全混合状態を仮定した必要な換気量 Q [m3/s]は下記の式[1]を用いて計算される。
Q = \frac{M}{C-C_{o}} \; \cdots \; [1]
【1】ガス状汚染質に関する必要換気量
ガス状汚染質(CO、CO2、HCHO、VOCsなど)に関する必要換気量は、図1に示す一つの系に対する体積バランス(体積収支)を考え、流入空気による輸送 CoQ [m3/s]と内部粉塵発生量 M [m3/s]が、流出空気による輸送 CQ [m3/s]に等しいとおけば、式[2]が成立される。
Q = \frac{M}{C-C_{o}} \; \cdots \; [2]
図1. ガス状汚染質の体積バランス
【2】排湿に関する必要換気量
排湿に関する必要換気量は、図2に示す一つの系に対する質量バランス(質量収支)を考え、流入空気による輸送 ρXoQ [kg/s]と内部粉塵発生量 W [kg/s]が、流出空気による輸送 ρXQ [kg/s]に等しいとおけば、式[3]が成立される。
Q = \frac{W}{\rho (X-X_{o})} \; \cdots \; [3]
図2. 湿気の質量バランス
【3】排熱に関する必要換気量
排熱に関する必要換気量は、図3に示す一つの系に対する熱量バランス(熱量収支)を考え、流入空気による輸送 ρCPToQ [W]と内部発熱量 H [W]が、流出空気による輸送 ρCPTQ [W]に等しいとおけば、式[4]が成立される。
Q = \frac{H}{\rho C_{P}(T-T_{o})} \; \cdots \; [4]
図3. 熱量バランス
【4】粉塵に関する必要換気量
粉塵(粒子状汚染質)に関する必要換気量は、図4に示す一つの系に対する質量バランス(質量収支)を考え、流入空気による輸送 CoQ [mg/s]と内部粉塵発生量 D [mg/s]が、流出空気による輸送 CQ [mg/s]に等しいとおけば、式[5]が成立される。
Q = \frac{D}{C-C_{o}} \; \cdots \; [5]
図4. 粉塵の質量バランス
Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]