換気効率

2020-11-21 オフ 投稿者: SHANY™
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気を行う第一の理由は、室間に清浄な空気を供給し、できるだけ効率的に汚染質を取り除くことである。空気中の汚染質は流動する空気と強くむずび付けられているので、部屋への新鮮空気の供給はある意味で、新鮮さを失った空気や汚染された空気を除去あるいは置換することととらえることができる。直感的には新鮮空気の供給と汚染質の除去は、本質的に同じことである。換気の性能は、基本的には着目するレベル以下に濃度を維持する能力によって評価される。図1において汚染質は、局所的発生源、あるいは点発生源Q から発生量 S で放出される。重要な地点は、センサー位置 P で示される居住者の頭部高さでの吸気であろう。


図1. 吸気濃度が低い場合、換気性能は良好(点発生源 Q、センサー位置 P




【1】局所清浄度指数


P における汚染質濃度の値は、公表されている当該汚染質の最大許容濃度(maximum allowable concentration, MAC)の値と比較するのが妥当である。換気風量の判定や他のシステムとの比較には適切に規準化された濃度を使用する方がもっと便利である。排気中の定常濃度は適切な参照値になる。図1の状況では、排気の定常濃度を用いて式[1]の局所清浄度指数(local air quality index)の定義が導かれる。

局所清浄度指数 εPc は、与えられた点で局所汚染質濃度の尺度であり、定常条件下の排気中の汚染質濃度 Ce と定常条件下の室内評価点 P における汚染質濃度 CP との比で定義される。

\varepsilon_{\textrm{P}}^{\textrm{c}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{C_{\textrm{P}}} \; \cdots \; [1]



【2】汚染質除去効率


図2に示すように、実際の居住者の位置が不明な場合や全体値のみに関心がある場合(センサーの位置 P が特に与えられてない場合)には、与えられた発生位置に対して部屋全体の効率が計算される。部屋全体の平均定常濃度が分かっている場合、式[2]の汚染質除去効率(contaminant removal effectiveness, CRE)の定義が導かれる。

汚染質除去効率 εc は、空気中の汚染質がどのくらい速く室内から除去されるかを表す尺度であり、定常条件下の排気中の汚染質濃度 Ce と定常条件下の室平均汚染質濃度 <C> との比で定義される。

\varepsilon^{\textrm{c}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{\left \langle {C} \right \rangle} \; \cdots \; [2]

図2. 点発生源 Q によって形成される濃度場


[★課題1] ここで、排気濃度 Ce はどうやっ求めるのか?

入れ替る空気量が qv の場合、給気 Cs と排気 Ce の間の濃度上昇は、定常状態では単純な質量収支により式[3]で表される。それとも、濃度測定器を用いて排気濃度を直接計測すればよいでしょう。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{\textrm{e}} = \frac{S}{q_{\textrm{v}}} + C_{\textrm{s}} \; \cdots \; [3] \end{aligned}\end{array}

[★課題2] 汚染質発生源位置が固定された場合、室平均濃度 <C> はどうやっ求めるのか?

汚染室除去効率は、汚染質発生源位置に対する室内平均濃度 <C >が必要である。ですから、汚染質発生源位置 Qからトレーサガス供給開始後、排気濃度の立ち上がりデータを計測(tracer step-up method)して <C >値を求めるか、それとも、定常濃度到達後、濃度の立下りデータを計測(tracer step-down (decay) method)して<C >値を求める。一方、実測による計測が難しいのであれば、CFD(computational fluid dynamics)解析を行って算出する。

(1) トレーサステップアップ法(tracer step-up method)による求め方

図3. トレーサステップアップ法によるターンオーバー時間の測定

・Q点からトレーサガスを室内に連続散布し、排気濃度上昇を計測する。
・排気濃度 Ce,up(t)は、初期値 0から最終的に定常濃度である Ce,sに到達される。
・ガスの供給量と排出量の差は、室内ガス残留量となる。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} V{\left<C\right>} &= Q\int_{0}^{\infty}\left [C_{e,s}-C_{e,up}(t) \right ]dt=Q \cdot C_{e,s} \tau_{to,up} \; \cdots \; [4] \\\ \therefore \varepsilon ^{c} &= \frac{C_{e,s}}{\left<C\right>}=\frac{V/Q}{\tau _{to,up}}=\frac{\tau _{n}}{\tau _{to,up}} \; \cdots \; [5] \end{aligned}\end{array}

(2) トレーサステップダウン法(tracer step-down (decay) method)による求め方

図4. トレーサステップダウン法によるターンオーバー時間の測定

・Q点からトレーサガスを室内に連続散布し、定常濃度到達後にガス供給を停止、その後の排気濃度減衰を計測する。
・排気濃度 Ce,dn(t)は、初期に定常濃度である Ce,sから最終的に 0になる。
・ガス排出量は、室内ガス残留量となる。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} V{\left<C\right>} &= Q\int_{0}^{\infty}\left [C_{e,dn}(t) \right ]dt=Q \cdot C_{e,s} \tau_{to,dn} \; \cdots \; [6] \\\ \therefore \varepsilon ^{c} &= \frac{C_{e,s}}{\left<C\right>}=\frac{V/Q}{\tau _{to,dn}}=\frac{\tau _{n}}{\tau _{to,dn}} \; \cdots \; [7] \end{aligned}\end{array}



【3】局所空気交換指数


時には、発生源が部屋中を動いたり、発生源の位置が不明な場合がある。その場合には図5に示されているように、ある一つのセンサー P に対して一様な汚染質発生源の分布が妥当性をもつかもしれない。これは局所空気齢の概念であり、式[7]で定義される局所空気交換指数に対応する。

局所空気交換指数 εPa は、特定の位置の状態を特徴つけるものであり、測定地点である室中の位置によって大きな値を取りうる。局所空気交換指数は、名目換気時間 τn と点 P での局所平均空気齢 τP との比で定義される。

\varepsilon_{\textrm{P}}^{\textrm{a}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{C_{\textrm{P}}} = \frac{{\tau}_{\textrm{n}}}{\bar{\tau}_{\textrm{P}}} \; \cdots \; [7]

図5. 一様分布した発生源 Q によって形成される濃度場
【発生源は部屋全体に一様に分布し、濃度は点 P で測定される(局所空気齢の概念)。】




【4】空気交換効率


図6に示すように発生源 Q もセンサー P も特定されない場合でも式[8]で定義される空気交換効率による全体評価が可能である。

空気交換指数 εa は、室空気全体の最短の空気交換時間、つまり、名目換気時間 τn と実際の空気交換時間 τr との比で定義される。また、最小の空気交換時間 τn/2 と室平均空気齢<τ>との比としても定義することができる。

\varepsilon^{\textrm{a}} = \frac{{\left \langle {C} \right \rangle}_{\textrm{min}}}{\left \langle {C} \right \rangle} = \frac{{\tau}_{\textrm{n}}}{2{\left \langle {\bar{\tau}} \right \rangle}} \; \cdots \; [8]

図6. 一様分布した発生源 Q によって形成される濃度場
【汚染質発生源は一様に分布し、室の平均濃度にだけ着目する。これは室の平均空気齢の概念を導く。】




Reference – Elisabeth Mundt(ed.), Hans Martin Mathisen, Peter V. Nielsen, Alfred Moser: Ventilation Effectiveness, REHVA Guidebook No.2, REHVA, 2004.
[REHVA – Federation of European Heating and Air-conditioning Associations]

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