平板に沿う流れの対流熱伝達

2020-12-22 オフ 投稿者: SHANY™
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い前縁をもつ平板上の境界層の発達の概略を図1に示す。層流境界層は前縁から発達して厚くなっていくが、ある距離 xc 進むと遷移域を経て乱流になる。この xc は臨界レイノルズ数 Rec = Uxc / ν ≒ 5×105 で与えられる。ただし、代表速度 U は平板から十分離れた主流速度である。この臨界値は前縁の仕上げ状態や主流中の乱れなどの影響を受ける。


図1. 強制対流による平板上の速度境界層・温度境界層


速度境界層(δx)は流速 U = 0.99∙Uになる平板からの y 軸距離、温度境界層(δt)は温度差 T Ts = 0.99∙(TTs) となる平板からの y 軸距離として定義される。この境界層は層流流動(laminar flow)が乱流流動(turbulent flow)に変わるため、境界層近似と相似変数を用いて定常・非圧縮流動として検討すると、図1に示してような δxδt になる。



一方、熱伝達率に影響を及ぼす因子はきわめて多いが、普通、相似則を適用した無次元関数式で表される。熱伝達における代表的な無次元数(ヌッセルト数 Nu、レイノルズ数 Re、グラスホフ数 Gr、プラントル数 Pr)を下記に示す。

\textrm{Nu} = \frac{h L}{k} \; \cdots [1]
\textrm{Re} = \frac{u L}{\nu} \; \cdots [2]
\textrm{Gr} = \frac{g \beta l^3 \Delta t}{\nu^2} \; \cdots [3]
\textrm{Pr} = \frac{\nu}{a} \; \cdots [4]

ここに、ヌッセルト数 Nu は「熱伝達による伝熱量/熱伝導による伝熱量」、レイノルズ数 Re は「慣性力/粘性力」、グラスホフ数 Gr は「浮力/粘性力」、プラントル数 Pr は「運動量の拡散速度/熱の拡散速度」を表す無次元関数である。また、h は熱伝達率 [W/(m2·K)]、L は代表寸法 [m]、k は流体の熱伝導率 [W/(m·K)]、u は代表速度 [m/s]、ν は動粘性 [m2/s]、g は重力加速度 [m/s2]、β は体膨張係数 [K-1]、Δt は代表温度差 [K]、a は熱拡散率 [m2/s]である。


無次元関数式は一般に、強制対流では式[5]、自然対流では式[6]として表される。

\textrm{Nu} = f(\textrm{Re}, \textrm{Pr}) \; \cdots [5]
\textrm{Nu} = f(\textrm{Gr}, \textrm{Pr}) \; \cdots [6]

ただし、Nu には熱伝達率と同じく、局所値と平均値がある。局所値は熱伝達率h に局所熱伝達率 hx を、平均値は平均熱伝達率 hL を用いたものである。ここでは、局所ヌッセルト数(local Nusselt number)に対しては Nux を、平均ヌッセルト数(average Nusselt Number)に対しては NuL の記号を用いることにする。



平板における局所ヌッセルト数(local Nusselt number)及び平均ヌッセルト数(average Nusselt Number)は、平板に均一な温度条件を与えた場合と平板に均一な熱流束条件を与えた場合によって異なり1[1] John H. Lienhard IV, John H. Lienhard V. : A heat transfer textbook, Third Edition, pp.302-311, 2006.、まとめて表すと下記のようになる。


【A】局所ヌセルト数(local Nusselt number)


(1) 平板に「温度固定条件」を与えた場合
平板に均一な温度を与えた場合は、式[7]、[8]に示した実験・経験式を利用する。

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.332 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [7]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.0296 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [8]

(2) 平板に「熱流束固定条件」を与えた場合
平板に均一な熱流速を与えた場合は、式[9]、[10]に示した実験・経験式を利用する。

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.453 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [9]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.0308 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [10]

また、全体平板における平均ヌッセルト数(average Nusselt number)は、局所ヌッセルト数を求める上記の式[7]~[10]を下記の式[11]に代入し、積分することにより求める。

h = \frac{1}{L} \int_{0}^{L} {h}_{\textrm{x}}dx \; \cdots [11]

【B】平均ヌセルト数(average Nusselt number)


(1) 平板に「温度固定条件」を与えた場合

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.664 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [12]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.0370 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [13]

(2) 平板に「熱流束固定条件」を与えた場合

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.906 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [14]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.0385 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [15]

[1] John H. Lienhard IV, John H. Lienhard V. : A heat transfer textbook, Third Edition, pp.302-311, 2006.




以上の内容を踏まえ、平板に沿って流れる強制対流に対して2次元CFD解析(Abe-Kondoh-Nagano低レイノルズ数型k-ε乱流モデル)を行い、平板においてのヌッセルト数と熱伝達率を求めた結果を簡単に紹介する。


長さ L = 1.0 m の平板に沿う流れを図2、3のように2次元CFD解析モデルを作成し、流速 U = 1.0 m/s、T = 23.0 、P = 101,325 Paの境界条件を与え、解析を行う。図2には平板に均一な温度を与えた場合、図3には平板に均一な熱流速を与えた場合であり、平板秒面における温度変化、熱流変化、Nu数の変化、熱伝達率の変化を求め、実験・経験式と比較する。

図2. 温度固定条件

図3. 熱流速固定条件


図2に示した平板に「均一な温度」を与えた場合におけるCFD解析結果を下図に示す。

T [ºC]

qx [W/m2]

Nux [-]

hx [W/(m2·K)]


また、図3に示した平板に「均一な熱流速」を与えた場合におけるCFD解析結果を下図に示す。

T [ºC]

qx [W/m2]

Nux [-]

hx [W/(m2·K)]


以上の解析結果について詳細な説明が必要な方は、李研究室にお問い合わせください。


二重窓に適用した外気導入型エアフローウィンドウの断熱性能及び表面結露発生有無に関する数値的研究
李時桓,加藤信介
日本建築学会環境系論文集,第79巻(第695号),pp.63-72,2014.01. (ISSN: 1348-0685(Print), 1881-817X(Online))
https://doi.org/10.3130/aije.79.63


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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