STUDIES

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 RESEARCH



築物一体型太陽光発電(BIPV, Building-integrated photovoltaics)は、建物にエネルギーを供給するシステムとして導入が進んでいる。BIPV の中でも、太陽光発電一体型日射遮蔽装置(PVSD, photovoltaic integrated shading devices)は、発電と同時に日射遮蔽を行うことが可能である。しかし、PVSD は建物内への自然光の入射を妨げるため、室内照明のエネルギー需要を増加させるという課題がある。そのため、発電、冷房負荷の低減、採光の確保など、複数の目的を最適化するPVSD 設計の開発が急務となっている。そこで本研究は、フレキシブル太陽光パネルと一体化した曲面形状の日射遮蔽ルーバー(フレキシブルPVSD or flexible PVSD)を新たに提案し、発電量・自然採光・眺望性を目的関数として最適設計を行う。

Actual measurement

Parameters

Illuminance

Pareto solutions


以上の研究について、もっと詳細な情報が必要な方は李研究室にお問い合わせください。


Performance enhancement of photovoltaic integrated shading devices with flexible solar panel using multi-objective optimization
Risa Ito, and Sihwan Lee
Applied Energy, Volume 373, 123866, p.1-14, 1 November 2024. (Print ISSN: 0306-2619, Online ISSN: 1872-9118)
Available online 13 July 2024.
https://doi.org/10.1016/j.apenergy.2024.123866


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化が進める中、建築物の屋上に太陽光発電システムの導入が進んでいる。しかし、延べ床面積当たりの屋根面積の少ない中高層建築物では消費エネルギーに対する電力供給量が少なく、屋上面のみの発電ではエネルギーの自立化が困難である。そこで、本研究では太陽光パネルを付着した日射遮蔽ルーバー(PVSD, Photovoltaic shading device)を太陽追尾型として新たに提案(可変型太陽光発電システム)する。特に本研究では、試作模型を製作し、実測による発電効率の把握と共に、日射解析によるパネル枚数の最適設計を行う。

試作模型

構成要素

垂直型PVSD

水平型PVSD


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Development of adjustable solar photovoltaic system for integration with solar shading louvers on building façades
Risa Ito, and Sihwan Lee
Applied Energy, Volume 359, 122711, p.1-15, 1 April 2024. (Print ISSN: 0306-2619, Online ISSN: 1872-9118)
https://doi.org/10.1016/j.apenergy.2024.122711


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、国境を越えて世界規模のパンデミックとなっている。その中、公共の場におけるマスクの着用は一般常識となり、一部の国では「マスク未着用」という行為に対する法整備を進め、違反者に罰金を伴う罰則も設けている。しかしながら、マスクの長時間の着用による息苦しさ(疲労感)夏場のヒートストローク(熱中症)など、健康被害も問題となりつつある。そこで、本研究ではマスク着用の有無が呼気・吸気の温度、湿度、CO2濃度にどのような影響を及ぼすのか、被験者実測によって明らかにする。また、吸気の温湿度の上昇が人体熱収支に及ぼす影響についても同時に検討する。

被験者実験

トランジュサー

マウスピース

熱画像


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マスク着用時の呼気・吸気特性に関する研究
Evaluation on respiratory characteristics by wearing a face mask
田村聖,李時桓,近藤志樹,金政一
室内環境学会学術論文集,B-04,p.119-120,2020.12.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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型コロナウイルス(COVID-19)やSARS、MERS、H1N1などの感染症とは、微生物が人に侵入・増殖して症状を起こすものである。感染者から出る感染粒子は、くしゃみ、咳、嘔吐、喋りなどによって空気中に飛散され、被感染者へ伝播される。しかし、室内へ飛散されたウイルスを換気によってどの程度早く除去できるのかについては未だ不明である。本研究では咳による飛沫並びに飛沫核の飛散特性について明らかにし、換気によるウイルス除去対策について検討することを目的とする。

3D MODEL

3D PLAN

咳モデリング

数値解析


以上の研究について詳細な情報が必要な方は、李研究室、又は、東京大学@大岡研究室にお問い合わせください。


咳による飛沫並びに飛沫核の飛散特性から見た室内換気対策
Scattering of saliva droplets while coughing and strategy for indoor ventilation
Sihwan Lee, Ryozo Ooka, and Wonseok Oh
日本建築学会大会学術講演梗概集,p.1577-1578,2020.09.

Numerical investigation of the correlation between droplets and droplet nuclei dispersion and room ventilation rate
Wonseok Oh, Ryozo Ooka, and Sihwan Lee
Indoor Air 2020, Paper ID-ABS-1226, 2020.11.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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物風荷重や通風、自然換気量などの予測には建物風圧力分布のデータが必須であり、CFD解析にて対応する場合の検討が進められている。建物風圧力分布の検討には時間平均化された流体の運動方程式(Reynolds-averaged Navier-Stokes equation, RANS)が良く使われ、乱流モデルの改良により予測精度を向上している。接近流の衝突する風上面で風圧係数を過大評価する欠点を持つ標準k-εモデルを改良したLKモデル(Launder-Kato model)1[1] Launder B.E. and Kato M. : Modeling flow induced oscillations in turbulence flow around a square cylinder, ASME, Fluid Engineering Conference, pp.20-24, 1993.、MMKモデル(Murakami-Mochida-Kondo model)2[2] Murakami S., Mochida A., Kondo K., and Ishida Y. : Development of new k-ε model for flow and pressure fields around bluff body, CWE96, Colorado, USA, 1996.、Durbinモデル3[3] Durbin, P.A. : On the k-ε stagnation point anomaly, International Journal of Heat and Fluid Flow 17, pp.89-90, 1996.などが良く採用される改良k-εモデルである。しかし、風圧係数に注目した乱流モデルが開口部を持つ建物に対してどのような乱れ特性を示すのか検討事例が少なく、特に単一開口を持つ建物の自然換気量予測に使用可能なのかも明確ではない。そこで本研究では、非定常乱れが再現可能な流体の運動方程式を空間的に平均化して解く手法であるLES(Large Eddy Simulation)を用いて単一開口を持つ建物の自然換気量予測を実施し、RANSモデルとの違いを明らかにする。

[1] Launder B.E. and Kato M. : Modeling flow induced oscillations in turbulence flow around a square cylinder, ASME, Fluid Engineering Conference, pp.20-24, 1993.
[2] Murakami S., Mochida A., Kondo K., and Ishida Y. : Development of new k-ε model for flow and pressure fields around bluff body, CWE96, Colorado, USA, 1996.
[3] Durbin, P.A. : On the k-ε stagnation point anomaly, International Journal of Heat and Fluid Flow 17, pp.89-90, 1996.


PATHLINE

LES 解析

乱流モデル

風圧係数


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単一開口を持つ立方体モデルの周辺気流による自然換気量予測
李時桓
空気調和・衛生工学会学術講演会学術講演会講演論文集,D-17,p.65-68,2020.09.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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貨店、一般商店、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどの商業施設は入店顧客を増やすため、店内空調を行っていることにも関わらず、ドアを開放状態で営業を行う(開門冷房、それとも開門暖房)ことが多い。ドアを開放状態で空調を行うと室内外温度差によって発生する漏気による冷暖房負荷が増加すると共に、室内冷暖房装置の効率が下がる原因となる。その対策として簡単に導入できる非循環式エアカーテンは漏気負荷を削減に寄与するものの、その熱遮断特性及び省エネ効果が不明であり、検討事例も少ないのが現状である。本研究では、非循環型エアカーテン(吹き下ろし式、横吹き式)と空気循環型エアカーテンの熱遮断特性について数値解析を用いて定量的に評価する。

エアカーテン

数値解析

モデリング

熱遮断効率


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Numerical study on safety factor for deflection modulus of the non-recirculating and the recirculating air curtain
Sihwan Lee
Building Simulation 2019, Roma, Italy, 2019.09.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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根面からの日射取得は夏季においては室内温度の上昇の大きな要因となっている。一方で冬季には室内温度上昇に寄与するため、屋根面の適切な日射制御が必要となる。近年では高日射反射率塗料による屋根面の遮熱が促進されており、評価手法も2008年にJIS K 5602「塗膜の日射反射率の求め方」1[1] JIS K 5602 : Determination of reflectance of solar radiation by paint film, Japanese Industrial Standards Committee, 2008.として確立されている。一方で屋根面の反射率による室内温熱環境や省エネルギー効果に関する研究は少ない。本研究は、屋根面の反射率が室内温熱環境と冷暖房負荷に及ぼす影響を把握することを目的とする。

[1] JIS K 5602 : Determination of reflectance of solar radiation by paint film, Japanese Industrial Standards Committee, 2008.


屋根材

長野市住宅街

実測模型

数値解析


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屋根の反射率による室内温熱環境と年間負荷に関する研究
Effect of solar reflectance of roof surface on indoor thermal environment
岡村晃,李時桓
室内環境学会学術論文集,A-38,p.105-106,2020.12.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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ロナ禍の中、室内空間における感染リスクを低減するためには、適正換気量を確保することが有効である1[1] ASHRAE Epidemic Task Force : Residential building guidance, 2020.と言われている。室内温度差がある場合、窓開放による漏気によって室内換気量を増加させることは可能である。しかし、どの程度窓開放が必要なのか、又は、換気量増加がどの程度室内温熱環境に影響を及ぼすのかに関する研究事例は少ない。そこで本研究では、窓開放による換気量増加がどの程度室内温熱環境に影響を及ぼすのか明らかにすることを目的とし、夏期冷房期間中に実測した結果を報告する。

[1] ASHRAE Epidemic Task Force : Residential building guidance, 2020.


検討対象

トレーラーハウス

機械換気

窓開閉換気


以上の研究に対してもっと詳細な内容が確認したい方は、下記の論文を確認するか、それとも李研究室にお問い合わせください。


窓開閉による夏期の自然換気量増加が室内温熱環境に及ぼす影響
Evaluation on indoor thermal environment with increasing natural ventilation rate
李時桓,岡村晃,近藤志樹
室内環境学会学術論文集,A-34,p.97-98,2020.12.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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業施設では入店顧客を増やすために、空調を行っているにも関わらず、ドアを開けたままで営業する開門冷房を行う店舗は少なくない。ドアを開放状態で空調を行うと室内外温度差によって発生する漏気が冷房負荷を増加させると共に、冷房装置の効率が下がる原因となる。そこで本研究では、開門冷房によるエネルギー損失量を把握し、エアカーテン、ミスト、暖簾などの設置がどの程度の漏気抑制に効果があるのか検討することで、開門冷房時における省エネ手法・改修方法を提案する。

熱画像

検討対象

店内環境

測定機器


漏気抑制として本研究で取り組んだものは下記に示すエアカーテン、ミスト、暖簾などであり、定量的な計測によりその効果を明らかにする。


エアカーテン

エアカーテン

ミスト

暖簾


以上の研究に対してもっと詳細な情報が必要な方は、下記の論文を確認するか、それとも李研究室にお問い合わせください。


Field measurement and dynamic simulation on the energy loss through door open with air conditioner running in a commercial store
Satoko Yano, and Sihwan Lee
Indoor Air 2020, Paper ID-ABS-0528, 2020.11.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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2019年10月13日、台風19号による猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川など21河川、24ヵ所で堤防が決壊し、住宅地などで大規模な洪水の被害が各地で発生した。長野市では千曲川の堤防が約70メートルにわたって決壊し、大量の水が住宅地に流れ込んだ。

https://www.city.nagano.nagano.jp/n040800/contents/p000019.html


※ Images source: 産経新聞社



長野市では台風19号により住宅が被災した市民を対象に「建設型仮設住宅」の随時募集を行い、下記の4種類の団地が作られ、令和元年11月26日(火曜日)~空き住戸の終了まで受け付けました。入居期間としては2年間(令和元年12月1日~令和3年11月30日)であり、家賃は無料、光熱水費・自治会費・入居者の過失による修繕費等は入居者が負担するものである。


・上松東仮設団地(木造):32戸
・若槻団地運動広場仮設団地(木造):23戸
・昭和の森公園仮設団地(プレハブ造):45戸
・駒沢新町第2仮設団地(トレーラーハウス):15戸


仮設住宅の入居者にストレスのない住環境を提供するため、長野市建設部住宅課、長野工業高等専門学校環境都市工学科、信州大学工学部建築学科@環境系グループは約2年間にかけ、仮設住宅の住環境(熱環境・空気環境・音環境)に関する実態調査を行っている。



以上の研究についてもっと詳細な情報が必要な方は、李研究室にお問い合わせください。


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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2020年4月に全面施行となった健康増進法の改正案により、多数の人が利用する様々な施設が原則屋内禁煙となり、受動喫煙を防止する取り組みが強まった。また、現在話題となっている新型コロナウイルス(COVID-19)は、5 μm未満の飛沫核(ここで、飛沫から水分が蒸発したものを飛沫核と呼ぶ)が数時間空気中を漂い続け1[1] World Health Organization : Infection prevention and control of epidemic and pandemic prone acute respiratory infections in health care: WHO Guidelines, p.1-133, 2014.、その粒子を吸い込むことで感染が起きる飛沫核感染2[2] Y. H Chao, M. P. Wan, L. Morawska, G. R. Johnson, Z. D. Ristovski, M. Hargreaves, K. Mengersen, S. Corbett, Y. Li, X. Xie, D. Katoshevski : Characterization of expiration air jets and droplet size distributions immediately at the mouth opening, Journal of Aerosol Science, Vol. 40(2), p.122-133, 2009.という感染ルート(マイクロ飛沫感染)が危険視されている。

受動喫煙やマイクロ飛沫感染など、空気環境の悪化が人体に悪影響を及ぼす問題が多く存在し、喫煙室、トイレ、病室などの汚染物質発生を伴う空間では、汚染物質の漏洩による隣室の空気環境への影響が懸念される。この問題を解決するために第3種換気方式により、室圧を負圧に維持する換気計画が一般的に施されている3[3] 個性労働省労働基準局:職場における喫煙対策のためのガイドライン,厚生労働省基発(代)09001号,2003.が、在室者の居室間移動の際、人体の後流による空気流動が汚染物質の漏洩4[4] 李時桓,奥野詩子,倉渕隆,朴炳龍:ドア開閉及び人体移動が室間換気量に及ぼす影響に関する研究(その1)ドア開き及び人体移動の速度と向きによる室間換気量の数値的検討,日本建築学会大会学術講演梗概集,41336,2014.につながると考えられる。


そこで本研究では、人間の居室間の移動時における隣室への汚染物質漏洩の影響を想定したドア周辺の気流特性の把握および、移動物体の形状の違いによる気流特性や室間漏気量への影響と関係性についての明確化する。


検討領域

CFD解析

煙発生実験

PIV実験


[1] World Health Organization : Infection prevention and control of epidemic and pandemic prone acute respiratory infections in health care: WHO Guidelines, p.1-133, 2014.
[2] Y. H Chao, M. P. Wan, L. Morawska, G. R. Johnson, Z. D. Ristovski, M. Hargreaves, K. Mengersen, S. Corbett, Y. Li, X. Xie, D. Katoshevski : Characterization of expiration air jets and droplet size distributions immediately at the mouth opening, Journal of Aerosol Science, Vol. 40(2), p.122-133, 2009.
[3] 個性労働省労働基準局:職場における喫煙対策のためのガイドライン,厚生労働省基発(代)09001号,2003.
[4] 李時桓,奥野詩子,倉渕隆,朴炳龍:ドア開閉及び人体移動が室間換気量に及ぼす影響に関する研究(その1)ドア開き及び人体移動の速度と向きによる室間換気量の数値的検討,日本建築学会大会学術講演梗概集,41336,2014.


以上の研究についてもっと詳細な情報が必要な方は下記の論文を確認するか、それとも李研究室にお問い合わせください。


Evaluation of air exchange rate by influence of human movement wake
Motoki Kondo, and Sihwan Lee
Indoor Air 2020, Paper ID-ABS-0530, 2020.11.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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射遮蔽ルーバーは、夏季には日射を制御し冷房負荷を軽減、冬季には日射を取得して暖房負荷を軽減する部材である。しかし、日射遮蔽ルーバーは多様な形状、材質、色が存在するし、日射遮蔽効果は時間帯や日射の角度、建物の方角により変動するため、効率良く設計することは困難である。そのため本研究では、日射遮蔽ルーバーの最適設計手法の提案を目的とし、日射遮蔽ルーバーの日射遮蔽効果を定量的に検討する。

それぞれの地球環境問題に対して世界では様々な対策をとっており、建築分野においても消費するエネルギーの削減が求められている。その中で、建物において開口部や屋根面からの日射取得は夏期の冷房負荷増大の大きな要因となっている。Dascalakiら1[1] Dascalaki, E G., Droutsa, K., Gaglia, A G., Kontoyiannidis, S. and Balaras, C A. : Data collection and analysis of the building stock and its energy performance – An example for Hellenic buildings, Energy and Buildings 42, p.1231-1237, 2010.は建物のファザードが環境に及ぼす影響は大きく、建設、不動産分野は炭素排出量削減を目指す社会にとって重要な分野である報告している。近年では日射遮蔽ルーバーや高日射反射塗料などの日射制御を行うパッシブデザインの普及も進んでいる。しかし、下図に示すように設計の段階に工学的な検討を行わないと費用対効果が得られない短所がある。


[1] Dascalaki, E G., Droutsa, K., Gaglia, A G., Kontoyiannidis, S. and Balaras, C A. : Data collection and analysis of the building stock and its energy performance – An example for Hellenic buildings, Energy and Buildings 42, p.1231-1237, 2010.


信州大学

松本図書館

ルーバー有り

ルーバー無し


以上の研究に対してもっと詳細な内容が確認したい方は、下記の論文を確認するか、それとも李研究室にお問い合わせください。


実測とCFDによるルーバーの日射遮蔽効果の検討
A study of solar shading effect of external louver by actual measurement and CFD simulation
岡村晃,李時桓
空気調和・衛生工学会学術講演会学術講演会講演論文集,E-26,p.101-104,2020.09.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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生労働省の 2017 年人口動態調査1[1] 厚生労働省:平成 29 年人口動態統計,2018.によると、毎年31,692人の高齢者(65 歳以上)が不慮の事故で死亡している。特に、不慮の溺死及び溺水による死亡者数は 6,759 人であり、2007 年の結果(4,527 人)より増加している。不慮の溺死及び溺水による死亡は入浴時に起きる場合が多く、冬期の寒い場所で着替えて入浴することで血圧の乱降下(ヒートショック)がその原因ではないかと考える。また、溺死者比率が大きい地域は、次世代省エネ地域区分2[2] 国土交通省:平成 25 年省エネルギー基準,2013.として 3、4、5 の地域であることが特徴である。この地域も寒冷地であるが、住宅の断熱・気密性能及び暖房設備の性能が次世代省エネ地域 1、2 よりも劣り、冬期の浴室の温熱環境が悪くなっているのがその原因であると考える。そこで本研究では、次世代省エネ地域 3、4、5 の代表地域である長野県を検討対象とし、住宅における浴室温熱環境について実態調査を行うことを目的とする。また、寒い浴室環境での入浴が人体にどのような影響を及ぼすのかを被験者実験で把握し、実態調査の結果と比較することでヒートショックの予防策を講ずる。

[1] 厚生労働省:平成 29 年人口動態統計,2018.
[2] 国土交通省:平成 25 年省エネルギー基準,2013.


死亡者数

改修前・後

脱衣前・後

入浴前・後


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Study on the thermal environment of bathroom and dress room with unexpected death in residential building
Chiho Horikawa, Sihwan Lee, and Yoshiharu Asano
Health Buildings 2019 Asia, Changsha, China, 2019.10.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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CFD解析のために簡略化されたエアコンなどの吹出口のモデリングは、吹出気流の速度分布や乱れ特性(乱流混合)などに大きく影響を与え、予測精度が低下し、実現象と対応出来ない恐れがある。本研究では、壁掛け型エアコンを対象とし、BOX法、PV法、Momentum法などの簡易モデリング手法には省略されている吹出口に稼働ベーンを解析に取り込んで、ベーンの角度変化が室内気流性状に与える影響を検討し、室内エアコンの吹出し気流設計にフィードバックする手法を提案する。

風量測定

PIV 測定

気流特性

冷房効率


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Influence of vane angle on the effectiveness of air conditioning of wall-mounted split-type air conditioners in residential buildings
Sihwan Lee, Juyoun Lee, and Shinsuke Kato
Science and Technology for the Built Environment, Volume 23, Issue 5, p.761-775, Jan.2017. (ISSN: 2374-4731(Print), 2374-474X(Online))
https://doi.org/10.1080/23744731.2016.1260410


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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年都市の密集・高層化による日射吸収や弱風化、空調などからの人工排熱、道路のコンクリート・アスファルト被膜などの影響でヒートアイランド現象が問題となっている。連続的な熱帯夜に悩まされることが多く、夏期の都会ではエアコンなしでは過ごしづらい環境になっている。このままでは、冷房設備は室内の熱をそのまま大気中に捨てるために、まち全体が暖められてしまう悪循環が断ち切れない。そこで、本研究ではまち全体のエコ及び冷房負荷削減の実現を目標に、ドライミストによる都市冷却効果について明らかにする。

ドライミスト

熱画像

モデリング

数値解析


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街区におけるドライミストの冷却効果とその予測法に関する研究(その1)実測・アンケート調査による温熱環境改善効果の検証
渡邊裕美子,倉渕隆,辻本誠,李時桓,上岡弘明
日本建築学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.613-614,2015.09.

街区におけるドライミストの冷却効果とその予測法に関する研究(その2)CFDを用いたドライミスト冷却効果の予測法について
上岡弘明,倉渕隆,辻本誠,李時桓,渡邊裕美子
日本建築学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.615-616,2015.09.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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宅において放射式暖房方式として床暖房、対流式暖房としてエアコン暖房が広く普及している。しかし両者における体感上の快適性は大きく異なり、その一因として総合熱伝達率の違いがあると考えられる。そこで、本研究ではサーマルマネキンを用いて総合熱伝達率を測定する方法を実験に基づき確立した上で床暖房、エアコン暖房を行う実住宅の居室を対象とした実測を行い、それぞれの暖房方式の特性を明らかにする事を目的とする。具体的には、まず作用温度が既知となる純粋な自然対流場としての無風環境、強制対流場としての一様気流環境で総合熱伝達率を求め、温度や風速による総合熱伝達率の変化を明らかにし、類似した条件の既往実験結果と比較する。その後、作用温度の推定が必要となる環境での総合熱伝達率の算出法を確立し、実住宅において床暖房、エアコン暖房条件下における総合熱伝達率の算出を試みた。

マネキン実験

マネキン実験

被験者実験

CFD 解析


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人体周りの熱伝達特性に関する研究(その1)サーマルマネキンを用いた暖房室内人体表面の総合熱伝達率に関する実験的研究
梶拓央,倉渕隆,大平昇,李時桓,山口さとみ,阿部加奈子
日本建築学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.41-42,2013.08.

人体周りの熱伝達特性に関する研究(その2)数値サーマルマネキンを用いた人体表面の熱伝達特性予測に関する研究
阿部加奈子,倉渕隆,大平昇,李時桓,山口さとみ,梶拓央
日本建築学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.43-44,2013.08.


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[Associate Professor, Nagoya University]

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研究は、住宅における省エネルギー化という課題に対して、既存住宅の断熱改修を迅速かつ簡易に実施する技術を開発することを目的とする。特に、赤外線カメラによる熱画像法について検討し、測定センサーの使用上の注意点及び校正方法を提案する。

熱画像法

測定風景

測定センサー

測定事例


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断熱診断技術の実用化及び既存住宅の断熱改修に関する研究(その1)強制対流型ストーブが設置された住宅における熱画像法の測定精度に関する検討
李時桓,加藤信介
日本建築学会環境系論文集,第76巻(第661号),p.289-295,2011.03. (ISSN: 1348-0685(Print), 1881-817X(Online))
https://doi.org/10.3130/aije.76.289

断熱診断技術の実用化及び既存住宅の断熱改修に関する研究(その2)熱画像法における測定センサーの測定感度に関する検討
李時桓,萩原伸治,黒木勝一,加藤信介
日本建築学会環境系論文集,第78巻(第685号),p.269-275,2013.03. (ISSN: 1348-0685(Print), 1881-817X(Online))
https://doi.org/10.3130/aije.78.269


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[Associate Professor, Nagoya University]

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 STUDIES


イナミックインシュレーション(dynamic insulation)とは、建物外皮に適用する通気性のある断熱材(ポーラス材)に対し、熱流方向と逆方向に空気を移流させることで、熱輸送(熱取得、又は熱損失)を妨げる断熱技術の一つである。

ダイナミックインシュレーションの概念は19世紀半ばからTechnische Universität MünchenのMax von Pettenkofferより建物外皮における通気性と住宅換気量について研究が進められ、ポーラス材で構成された壁面における気流の研究に繋がった1[1] Samuel A. A.: Simulation modelling of dynamic insulation as a means for energy saving and human comfort, University of Strathclyde, Glasgow, U.K., p.1-156, 2002.。その後、1966年、University of GuelphのPattie D. R.2[2] Pattie D. R.: Heat transmission of porous materials in ventilation, ASHRAE Transactions 9(3), p.409-416, 1966.によってポーラス材を通過する空気によって熱貫流率が小さくなることが熱移動原理と共に纏められた。続いて多くの研究者により、ダイナミックインシュレーションによる換気、室内空気質、エネルギー消費量削減率等に関して様々な研究が行われ、実験による理論の実証と共に、数学的モデルが提案されている。現在では、多量の換気量を要するスポーツセンター、効率的な湿気制御を要するスイミングプールなどへ適用可能なシステムとして活発な研究と共に、様々な用途をもつ建物の外壁、窓部への適用が進められている。

図1にダイナミックインシュレーションと通常の断熱材の違いを示す。ダイナミックインシュレーションの断熱性能を評価するためには、ポーラス材内の空気の移流による熱輸送を考慮した検討が必要である。即ち、通常の建物外皮を評価する熱貫流率Ustaticではなく、熱貫流率Udynamic(dynamic U-value)3[3] Taylor B. J., Cawthorne D. A., and Imbabi M. S.: Analytical investigation of the steady-state behaviour of dynamic and diffusive building envelopes., Building and Environment 31(6), p.519-525, 1996.を用いることになる。


図1. ダイナミックインシュレーション vs. 通常の断熱材



【1】通常の断熱材(Conventional insulation)


定常状態における通常の断熱材の1次元熱伝導方程式は、ヒートソース、ヒートシンクがなければ、式[1]に示す2階線形同次微分方程式で表せる。

k\frac{\mathrm{d}^2 T(x)}{\mathrm{d} x^2}=0 \; \cdots \; [1]

ここで、T [K]は温度、k [W/(m∙K)]は熱伝導率である。

この微分方程式を解くと、式[2]に示すx方向による温度勾配が計算できる。

\frac{T(x)-T(0)}{T(L)-T(0)}=\frac{x}{L} \; \cdots \; [2]
※ 2階線形同次微分方程式は、2回積分する方法で簡単に計算できる。
▶ (1) 式[1]をxに対して1回積分すると、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k \cdot \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x}=C_{1} \end{aligned}\end{array}
▶ (2) もう一度積分すると、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=C_{1}x+C_{2}\end{aligned}\end{array}
▶ (3-1) x = 0の場合はT(x) = T(0)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{2} = T(0) \end{aligned}\end{array}
▶ (3-2) x = Lの場合はT(x) = T(L)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{1} = \frac {T(L)-T(0)}{L} \end{aligned}\end{array}
▶ (4) 積分常数C1C2を入れて整理すると、x方向による温度勾配は下式となる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=\frac {T(L)-T(0)}{L}x+T(0) \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ \frac{T(x)-T(0)}{T(L)-T(0)}=\frac{x}{L} \end{aligned}\end{array}
※ 2階線形同次微分方程式は、特性方程式を用いる方法でも簡単に計算できる。
▶ (1) 式[2]を解くため、解の形を下記のように仮定する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{mx} \end{aligned}\end{array}
▶ (2) 仮定した上式は、積分することにより、下式で表せる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{mx} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x}=m \cdot e^{mx} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}^2 T(x)}{\mathrm{d}x^2}=m^2 \cdot e^{mx}  \end{aligned}\end{array}
▶ (3) 上式を式[2]に代入すると、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k \cdot m^2 \cdot e^{mx}=0 \end{aligned}\end{array}
▶ (4) k > 0、emx > 0なので、上式が成立するには、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ m_{1}=m_{2}=0 \end{aligned}\end{array}
▶ (5) (1)に示したT(x) = emxより、下式は式[4]の解である。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{m_{1}x}=e^0x=1 \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{m_{2}x}=e^0x=1 \end{aligned}\end{array}
▶ (6) ところで、mm1 = m2という重解をもつ場合、式[2]の一般解は下式で表せる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=(C_{1}\cdot x +C_{2})\cdot e^{mx}\end{aligned} \end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \because \ T(x)=C_{1}\cdot x +C_{2} \end{aligned} \end{array}
▶ (7-1) x = 0の場合はT(x) = T(0)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{2}=T(0) \end{aligned}\end{array}
▶ (7-2) x = Lの場合はT(x) = T(L)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{1}=\frac {T(L)-T(0)}{L}  \end{aligned} \end{array}
▶ (8) 積分常数C1C2を入れて整理すると、x方向による温度勾配は下式となる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=\frac {T(L)-T(0)}{L}x+T(0)  \end{aligned} \end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ \frac{T(x)-T(0)}{T(L)-T(0)}=\frac{x}{L} \end{aligned}\end{array}

熱貫流率Ustaticを求めるため、x=0における微小熱流移動(q=k·dT(x)/dx)を対象とすると、熱貫流率Ustaticは式[3]のように表すことが出来る。

U_{static}=\frac{k}{L} \; \cdots \; [3]
q=k·dT(x)/dx=Ustatic·(T(L)-T(L))であり、式[2]の両辺にkをかけて微分することでUstaticは下記のように計算できる。
▶ (1) 式[2]をT(x)に対して整理する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=T(0)+\frac{x}{L} \cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
▶ (2) 両辺kをかける。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot T(x)=k\cdot [T(0)+\frac{x}{L}\cdot (T(L)-T(0))] \end{aligned}\end{array}
▶ (3) 微分する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x} =k\cdot \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\cdot [T(0)+\frac{x}{L}\cdot (T(L)-T(0))] \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x} = q = \frac{k}{L}\cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
▶ (4) x = 0におけるUstaticは下式となる。→ 通常の断熱材は、xによらず一定値である。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(0)}{\mathrm{d}x} = q = \frac{k}{L}\cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ U_{static}=\frac{k}{L} \end{aligned}\end{array}


【2】ダイナミックインシュレーション(Dynamic insulation)


定常状態におけるダイナミックインシュレーションの1次元熱伝導方程式は、ヒートソース、ヒートシンクがなければ、式[4]に示す2階線形同次微分方程式で表せる。

k\frac{\mathrm{d}^2 T(x)}{\mathrm{d} x^2}-u\rho_{a}C_{p}\frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x}=0 \; \cdots \; [4]

ここで、T [K]は温度、k [W/(m∙K)]は熱伝導率、u [m/s]はポーラス材における見かけの通過速度、ρa [kg/m3]は空気密度、Cp [J/(kg∙K)]は空気比熱である。

この微分方程式を解くと、式[5]に示すx方向による温度勾配が計算できる。

\frac{T(x)-T(0)}{T(L)-T(0)}=\frac{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}-1}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \; \cdots \; [5]
※ 2階線形同次微分方程式は、特性方程式を用いる方法で簡単に計算できる。
▶ (1) 式[4]を解くため、解の形を下記のように仮定する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{mx} \end{aligned}\end{array}
▶ (2) 仮定した上式は、積分することにより、下式で表せる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{mx} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x}=m \cdot e^{mx} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{\mathrm{d}^2 T(x)}{\mathrm{d}x^2}=m^2 \cdot e^{mx}  \end{aligned}\end{array}
▶ (3) 上式を式[4]に代入すると、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k \cdot m^2 \cdot e^{mx} - u\rho_{a}C_{p} \cdot m \cdot e^{mx}=0 \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} (k \cdot m^2 -  u\rho_{a}C_{p} \cdot m) \cdot e^{mx}=0 \end{aligned}\end{array}
▶ (4) emx > 0なので、上式が成立するには、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k \cdot m^2 - u\rho_{a}C_{p} \cdot m = 0 \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} m(k \cdot m - u\rho_{a}C_{p}) = 0 \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ m_{1}=0, \ m_{2}=\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k} \end{aligned}\end{array}
▶ (5) (1)に示したT(x) = emxより、下式は式[4]の解である。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{m_{1}x}=e^0x=1 \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=e^{m_{2}x}=e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k} x} \end{aligned}\end{array}
▶ (6) ところで、C1C2が定数とすれば、上式を線形結合したものも解である。これが、mm1m2という異なる実解をもつ場合、式[4]の一般解である。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=C_{1}\cdot e^{m_{1}x} +C_{2}\cdot e^{m_{2}x}\end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \because \ T(x)=C_{1}\cdot e^0x +C_{2}\cdot e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k} x} = C_{1} +C_{2}\cdot e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k} x}\end{aligned}\end{array}
▶ (7-1) x = 0の場合はT(x) = T(0)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(0) = C_{1}+C_{2} \end{aligned}\end{array}
▶ (7-2) x = Lの場合はT(x) = T(L)であるため、
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(L) = C_{1}+C_{2}\cdot e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k} L} \end{aligned}\end{array}
▶ (8) 積分常数C1C2を消去して整理すると、x方向による温度勾配は下式となる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{T(x)-T(0)}{T(L)-T(0)} = \frac{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}-1}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \end{aligned}\end{array}

熱貫流率Udynamicを求めるため、x=0における微小熱流移動(q=k·dT(x)/dx)を対象とすると、熱貫流率Udynamicは式[6]のように表すことが出来る。

U_{dynamic}=\frac{u\rho_{a}C_{p}}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \; \cdots \; [6]
q=k·dT(x)/dx=Udynamic·(T(L)-T(0))であり、式[5]の両辺にkをかけて微分することでUdynamicは下記のように計算できる。
▶ (1) 式[5]をT(x)に対して整理する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} T(x)=T(0)+\frac{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}-1}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
▶ (2) 両辺kをかける。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot T(x)=k\cdot [T(0)+\frac{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}-1}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \cdot (T(L)-T(0))] \end{aligned}\end{array}
▶ (3) 微分する。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x} =k\cdot \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\cdot [T(0)+\frac{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}-1}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \cdot (T(L)-T(0))] \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(x)}{\mathrm{d}x} = q = \frac{u\rho_{a}C_{p} \cdot e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}x}}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1}  \cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
▶ (4) x = 0におけるUdynamicは下式となる。ここで、u ≠ 0である。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} k\cdot \frac{\mathrm{d}T(0)}{\mathrm{d}x} = q = \frac{u\rho_{a}C_{p}}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1}  \cdot (T(L)-T(0)) \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \ U_{dynamic}=\frac{u\rho_{a}C_{p}}{e^{\frac{u\rho_{a}C_{p}}{k}L}-1} \end{aligned}\end{array}

これらの式から見ると、ポーラス材内を通過する空気速度(u)の増加に伴ってx=0における温度勾配が急減し、熱貫流率Udynamicも幾何級数的に減少(図2参照)することが分かる。


図2. 通過風速による温度勾配と熱貫流率



[1] Samuel A. A.: Simulation modelling of dynamic insulation as a means for energy saving and human comfort, University of Strathclyde, Glasgow, U.K., p.1-156, 2002.【PDF LINK
[2] Pattie D. R.: Heat transmission of porous materials in ventilation, ASHRAE Transactions 9(3), p.409-416, 1966. https://doi.org/10.13031/2013.39993.
[3] Taylor B. J., Cawthorne D. A., and Imbabi M. S.: Analytical investigation of the steady-state behaviour of dynamic and diffusive building envelopes., Building and Environment 31(6), p.519-525, 1996. https://doi.org/10.1016/0360-1323(96)00022-4.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

5
0

MRT(平均放射温度、mean radiant temperature)は、人体が表面温度の不均一な周壁に取り囲まれ、壁との間で放射熱をやり取りする時、等価な放射熱を受ける均一な周壁温度を持つ仮想空間の壁面温度1[1] ISO 7726:1998, Ergonomics of the thermal environment – Instruments for measuring physical quantities, 1998. を示すものである。平均放射温度(MRT)を推定する方法は、定義からの方程式を用いて計算する方法と特定温度計又はセンサーによって測定する方法がある。

【1】MRTの計算法


人体からの放射熱伝達は、周壁と交換する熱フラックスの合計であり、平均放射温度(MRT)は周壁温度と人体の位置による角度係数から求められる。建材は一般的に放射率(ɛ)が高くて1と仮定し、角度係数の合計が1になるため、平均放射温度の4乗は、各角度係数を加重する周壁温度の4乗の平均値(式[1]参照)である。また、周壁との間に比較的に温度差が小さい場合では、式[2]に示すように線形の形で簡略化することも可能である。

{\overline{{T}_{r}}^{4}}={{T}_{1}}^{4}F_{\mathrm{p-1}}+{{T}_{2}}^{4}F_{\mathrm{p-2}}+\cdots+{{T}_{N}}^{4}F_{\mathrm{p-N}} \; \cdots [1]

ここに、Tr は放射温度 [K]、TN は表面Nにおける表面温度 [K]、Fp-N は人体と表面Nとの角度係数 [-]である。

{\overline{{T}_{r}}}={{T}_{1}}F_{\mathrm{p-1}}+{{T}_{2}}F_{\mathrm{p-2}}+\cdots+{{T}_{N}}F_{\mathrm{p-N}} \; \cdots [2]

【2】MRTの測定法


平均放射温度は、グローブ温度計を用いて推定することが可能である。一先ず、グローブ温度計と周りの環境との熱交換バランス式を考えると式[3]のように表すことが出来る。

{q_{\mathrm{r}}}+{q_{\mathrm{c}}}=0\; \cdots [3]

ここに、qr はグローブ温度計と囲まれた壁面との放射熱交換 [W/m2]、qc はグローブ温度計と囲まれた空気との対流熱交換 [W/m2]である。

Fig 1. Globe thermometer


式[3]のqrqc を分けて考えると、グローブ温度計と周りの環境との放射熱交換バランス式は式[4]、対流熱交換バランス式は式[5]のように表すことが可能である。

{q_{\mathrm{r}}}={\varepsilon_{\mathrm{g}}}{\sigma}\left ( {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}^{4}}-{{{T}_{\mathrm{g}}}^{4}} \right )\; \cdots [4]

ここに、ɛg はグローブ温度計の放射率 [-]、Tg はグローブ温度 [K]、σ はシュテファン=ボルツマン定数(Stefan–Boltzmann constant)であり、SI単位系で、σ=5.67×10-8 [W/(m2⋅K4)]と与えられる。


{q_{\mathrm{c}}}={h_{\mathrm{cg}}}\left ( {{T}_{\mathrm{a}}}-{{{T}_{\mathrm{g}}}} \right )\; \cdots [5]

ここに、hcg はグローブ温度計の対流熱伝達率 [W/(m2⋅K)]であるが、グローブ温度計の場合は自然対流、強制対流によって下記の式[6]と式[7]で推定可能である。

自然対流(natural convection)の場合
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {h_{\mathrm{cg}}}=1.4\left ( \frac{\Delta{T}}{D} \right )^{1/4}\; \cdots [6] \end{aligned}\end{array}
ここに、ΔT はグローブ温度と周り空気の温度差 [K]、D はグローブ温度計の直径 [m]である。
強制対流(forced convection)の場合
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {h_{\mathrm{cg}}}=6.3\frac{v_{\mathrm{a}}^{0.6}}{D^{0.4}}\; \cdots [7] \end{aligned}\end{array}
ここに、va はグローブ温度計周りの気流速度 [m/s)]である。

よって、式[4]と式[5]を式[3]に入れて整理すると、熱バランス式は式[8]のように表現される。

{\varepsilon_{\mathrm{g}}}{\sigma}\left ( {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}^{4}}-{{{T}_{\mathrm{g}}}^{4}} \right )+{h_{\mathrm{cg}}}\left ( {{T}_{\mathrm{a}}}-{{{T}_{\mathrm{g}}}} \right )=0\; \cdots [8]

式[8]を平均放射温度に関して整理すると、式[9]が得られる。

{\overline{{T}_{\mathrm{r}}}}=\sqrt[4]{{{{T}_{\mathrm{g}}}^{4}}+\frac{{h_{\mathrm{cg}}}}{\varepsilon_{\mathrm{g}}{\sigma}}\left ( {{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}} \right )}\; \cdots [9]

以上のことより、グローブ温度計を用いて平均放射温度を測定すると、自然対流、強制対流によって下記の式[10]と式[12]で推定可能である。また、グローブ温度計は、直径(D)0.15 m、放射率(ɛ)0.95のものが標準グローブ温度計として一般的に勧奨されるので、標準グローブ温度計を用いた場合は、式[11]と式[13]によって平均放射温度が求められる。

自然対流(natural convection)の場合
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}}=\left [ { \left ( {T}_{\mathrm{g}}+273.15 \right ) ^{4}+\frac{{0.25 \times 10^8}}{\varepsilon_{\mathrm{g}}}\left ( \frac {\left| {{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}}\right| }{D}\right ) ^{1/4} \times \left ( {{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}}\right ) } \right ]^{1/4}-273.15 \; \cdots [10] \end{aligned}\end{array}
自然対流状況で標準グローブ計(D=0.15 m、ɛ=0.95)を使用した場合
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}}=\left [ { \left ( {T}_{\mathrm{g}}+273.15 \right ) ^{4}+0.4 \times 10^8 \left| {{T}_{\mathrm{g}}}-{{T}_{\mathrm{a}}}\right|^{1/4} \times \left ( {{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}}\right ) } \right ]^{1/4}-273.15 \; \cdots [11] \end{aligned}\end{array}
強制対流(forced convection)の場合
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}}=\left [ { \left ( {T}_{\mathrm{g}}+273.15 \right ) ^{4}+\frac{{1.1 \times 10^8 \times v_{\mathrm{a}}^{0.6}}}{\varepsilon_{\mathrm{g}} \times D^{0.4}}\left ({{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}}\right ) } \right ]^{1/4}-273.15 \; \cdots [12] \end{aligned}\end{array}
強制対流状況で標準グローブ計(D=0.15 m、ɛ=0.95)を使用した場合
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} {\overline{{T}_{\mathrm{r}}}}=\left [ { \left ( {T}_{\mathrm{g}}+273.15 \right ) ^{4}+2.5 \times 10^8 \times v_{\mathrm{a}}^{0.6} \left ( {{T}_{\mathrm{g}}}-{{{T}_{\mathrm{a}}}}\right ) } \right ]^{1/4}-273.15 \; \cdots [13] \end{aligned}\end{array}


[1] ISO 7726:1998, Ergonomics of the thermal environment – Instruments for measuring physical quantities, 1998.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

9
0

物の開口部で生じる自然換気量は、下記の式[1]を用いて計算される。

Q = \alpha A\sqrt{\frac{2 \Delta P}{\rho}} \; \cdots \; [1]

ここで、Q [m3/s]は換気量、α [-]は流量係数、A [m2]は開口面積、ρ [kg/m3]は流体密度(空気の場合は、約1.2 kg/m3)、ΔP [Pa]は室内外圧力差である。

式[1]によると自然換気量は、室内外圧力差(温度差 ΔT か風力差 ΔP )に比例し、開口における圧力損失(流量係数 αの逆数)に反比例する形で計算される。以下では、流量係数 α、有効開口面積 αA、温度差 ΔT、風力差 ΔP についてそれぞれ概説する。


※ 多重開口ではなく、単一開口における自然換気量の計算法は計算原理が異なるため、下記のブログをご確認ください。
https://lee-lab.net/blog-contents-004




【1】流量係数(α


様々な開口部における流量係数を図1に示す。通常の窓は0.6~0.7程度であるが、ベルマウスでは開口部の入口に沿って気流が自然に加速することができ、縮流が生じることなく流量係数は概ね1となる。また、ルーバーの場合はその角度によって圧力損失が変わるため、角度によって異なる。窓の開き角度によって変わる流量係数は図2に示す。また、網戸、カーテン、ブラインドなどを使用する場合にも圧力損失が生じるため、適正な流量係数は計測して適用する必要がある。

図1. 開口部における流量係数

図2. 窓の開き角度による流量係数
(Calculated by Akane Tsutsumi et al. [PDF])



【2】有効開口面積(αA


有効開口面積(αA)は開口配置によって並列合成と直列合成に分けて計算でき、それぞれ式[5]と式[9]で計算される。


αA の並列合成

有効開口面積(αA)の並列合成は図2に示したものであり、開口部1と2の前後に作用する全圧PTa とPTb が等しいとしてαA値を計算する。

図3. αAの並列合成

Q_{1} = \alpha_{1} A_{1} \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P}}{\rho} } \; \cdots \; [2]
Q_{2} = \alpha_{2} A_{2} \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P}}{\rho} } \; \cdots \; [3]
\def\arraystretch{1.2}\begin{aligned} Q & = Q_{1}+Q_{2} \\\ &= (\alpha_{1} A_{1}+\alpha_{2} A_{2}) \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P}}{\rho} }
\; \cdots \; [4]
\end{aligned} 
\alpha A_{合} = \alpha_{1} A_{1} + \alpha_{2} A_{2}  \; \cdots \; [5]

αA の直列合成

有効開口面積(αA)の直列合成は図3に示したものであり、開口部1と2を通過する風量Q が等しいとしてαA値を計算する

図4. αA の直列合成

Q = \alpha_{1} A_{1} \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P_{a} }}{\rho} } = \alpha_{2} A_{2} \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P_{b} }}{\rho} } \; \cdots \; [6]
\def\arraystretch{1.5}\begin{aligned}
\Delta P & = \Delta P_{a} + \Delta P_{b} \\
& = \frac{1}{2} \rho \left(\frac{Q}{\alpha_{1} A_{1}} \right)^{2} +  \frac{1}{2} \rho \left(\frac{Q}{\alpha_{2} A_{2}} \right)^{2}
\; \cdots \; [7]
\end{aligned}
Q =\frac{1}{\sqrt {\left(\frac{1}{\alpha_{1} A_{1}} \right)^{2} + \left(\frac{1}{\alpha_{2} A_{2}} \right)^{2}}} \sqrt{ \frac{{2}{\Delta}{P}}{\rho} }  \; \cdots \; [8]
\alpha A_{合} = \frac{1}{\sqrt {\left(\frac{1}{\alpha_{1} A_{1}} \right)^{2} + \left(\frac{1}{\alpha_{2} A_{2}} \right)^{2}}} \; \cdots \; [9]


【3】風力換気


建物に風が吹き付けると、圧に風圧力が加算されて作用する。図5に示すように風上側に掛かって来る風圧 Pw [Pa]は、基準風速 (軒高風速が基準)U [m/s]と風圧係数 Cw [-]を用いて式[10]で計算される。

図5. 風力による圧力差

P_{\mathrm{w}} = C_{\mathrm{w}}\frac{1}{2}\rho_{\mathrm{o}}U^{2} \; \cdots \; [10]

ここで、Pw [Pa]は風圧、Cw [-]は風圧係数、ρo [kg/m3]は外気密度、U [m/s]は基準風速である。


開口部がある建物に風が吹き付けると、図6に示すように風上側に掛かって来る風圧 Pw1 [Pa]は、基準風速 U [m/s]と風圧係数 Cw1 [-]を用いて式[11]で計算できる。

図6. 風力による圧力差

\Delta P = \left ( C_{\mathrm{w1}}-C_{\mathrm{w2}} \right )\frac{1}{2}\rho_{\mathrm{o}}U^{2} \; \cdots \; [11]

ここで、ΔP [Pa]は風圧Pw1 [Pa]と風圧Pw2 [Pa]の差圧、Cw1 [-]は風上側の風圧係数、Cw2 [-]は風下側の風圧係数、ρo [kg/m3]は外気密度、U [m/s]は基準風速である。


式[11]を式[1]に代入して整理すると風力による換気量Qは式[12]で計算できる。

Q = \alpha A_{合} \cdot U \cdot \sqrt{C_{\mathrm{w1}}-C_{\mathrm{w2}} } \; \cdots \; [12]

一方、風圧係数は実測、模型を用いた風洞実験(図7参照)によって測定値を用いるか、それとも推定式、CFD解析などによる計算値を使う場合もある。図8、図9にAkinsら(1979)1[1] Akins, R.E., J.A. Peterka, and J.E. Cermak. 1979. Averaged pressure coefficients for rectangular buildings. Wind Engineering: Proceedings of the Fifth International Conference, vol. 7, pp. 369-380.が高層ビルを対象として行った風洞実験の壁面、屋根面の結果値を示し、図10には低層ビルに対してSwamiら(1987)2[2] Swami, M.V., and S. Chandra. 1987. Procedures for calculating natural ventilation airflow rates in buildings. Final Report FSEC-CR-163-86. Florida Solar Energy Center, Cape Canaveral.が報告した風圧係数を示す。

図7. 模型を用いた風洞実験による風圧係数

図8. 壁面における風圧係数(Akins et al.)

図9. 屋根面における風圧係数(Akins et al.)

図10. 壁面における風圧係数(Swami et al.)

また、Walkerら(1994)3[3] Walker, I.S., and D.J. Wilson. 1994. Practical methods for improving estimates of natural ventilation rates. Proceedings of the 15th IEA Conference of the Air Infiltration and Ventilation Centre, Buxton, U.K., pp. 517-526.は、風の風向角による風圧係数の推定式を式[13]のように提案している。

\def\arraystretch{1.5}\begin{aligned}
{C}_{\textrm{p}}(\phi) = & 1/2 \{ [{{C}_{\textrm{p}}(1)}+{{C}_{\textrm{p}}(2)}](cos^{2}\phi)^{1/4} \\\ 
& +
[{{C}_{\textrm{p}}(1)}-{{C}_{\textrm{p}}(2)}](cos\phi)^{3/4} \\\ 
& +
[{{C}_{\textrm{p}}(3)}+{{C}_{\textrm{p}}(4)}](sin^{2}\phi)^{2} \\\ 
& +
[{{C}_{\textrm{p}}(3)}-{{C}_{\textrm{p}}(4)}]sin\phi \}
\end{aligned}
 \; \cdots \; [13]

ここで、Cp(1) は風向0°での風圧係数、Cp(2) は風向180°での風圧係数、Cp(3) は風向90°での風圧係数、Cp(4) は風向270°での風圧係数、φ は壁面に対して時計回り風向角である。



【4】温度差換気


図11に示すように室内上下に開口部があり、室内温度が室外温度より高い場合には、室内は上昇気流が生じる。これを温度差換気と言い、その換気量は以下の式[14]で室内外圧力差を求め、式[1]に代入することで計算できる。

\Delta P = \Delta \rho g h  \; \cdots \; [14]

ここで、ΔP [Pa]は開口部1における風圧P1 [Pa]と開口部2における風圧P2 [Pa]の差圧、Δρ [kg/m3]は室外の空気密度ρo [kg/m3]と室内の空気密度ρi [kg/m3]の密度差、g [m/s2]は重力加速度、h [m]は開口間の高さである。

図11. 温度差による圧力差

式[14]における室内外密度差Δρは、式[15]に示すシャルル法則(Charles’ law)によって室外温度Ti [K]と室内外温度差ΔT [K]に変換でき、式[16]のように表せられる。

\rho_{\mathrm{o}} T_{\mathrm{o}} =  \rho_{\mathrm{i}} T_{\mathrm{i}} \; \cdots \; [15]
\begin{aligned}
\Delta \rho & = \rho_{\mathrm{o}} - \rho_{\mathrm{i}} = \rho_{\mathrm{o}} - \frac{\rho_{\mathrm{o}}T_{\mathrm{o}}}{T_{\mathrm{i}}} \\\ 
& = \frac{\rho_{\mathrm{o}}(T_{\mathrm{i}} - T_{\mathrm{o}})}{T_{\mathrm{i}}}  = \frac{\rho_{\mathrm{o}}\Delta T}{T_{\mathrm{i}}} \; \cdots \; [16]
\end{aligned}

ここで、ΔT [K]は室内温度Ti [K]と室外温度To [K]の室内外温度差である。

式[14]に式[16]を代入して整理すると、式[17]のように表せられる。

\Delta P = \Delta \rho g h  = \frac{\rho_{\mathrm{o}}\Delta Tgh}{T_{\mathrm{i}}} \; \cdots \; [17]

式[17]を式[1]に代入して整理すると温度差による換気量Qは式[18]で計算できる。

Q = \alpha A_{合} \cdot \sqrt{\frac{2 \cdot \Delta Tgh}{T_{\mathrm{i}}} } \; \cdots \; [18]

※ 開口部が一箇所の建物では開口部での大気基準圧は0となり、それ以上では正圧(図12参照)となる。ここで大気基準圧とは、同一高度の大気圧を基準とした圧力表示を大気基準圧と言う。
図12. 開口部が一箇所の建物
また、上部にも開口部ができると、上部では正圧、下部では負圧となる分布が形成され、上部で室空気が流出し、下部から流入(図13参照)する。
図13. 開口部が二箇所の建物
一方、中性帯の高さは、開口部の有効開口面積(αA)が同じであれば中立位置に形成されるが、開口部の有効開口面積が異なるとαAが大きい方(図14参照)に近づく
図14. 開口部の有効開口面積(αA)と中性帯高さの関係

★ 以上の自然換気量の計算法に基づき、例題を解くことで深く学習したい方は下記のブログをご確認ください。
https://lee-lab.net/blog-contents-005




[1] Akins, R.E., J.A. Peterka, and J.E. Cermak. 1979. Averaged pressure coefficients for rectangular buildings. Wind Engineering: Proceedings of the Fifth International Conference, vol. 7, pp. 369-380.【PDF LINK
[2] Swami, M.V., and S. Chandra. 1987. Procedures for calculating natural ventilation airflow rates in buildings. Final Report FSEC-CR-163-86. Florida Solar Energy Center, Cape Canaveral.【PDF LINK
[3] Walker, I.S., and D.J. Wilson. 1994. Practical methods for improving estimates of natural ventilation rates. Proceedings of the 15th IEA Conference of the Air Infiltration and Ventilation Centre, Buxton, U.K., pp. 517-526.【PDF LINK


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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間全体の平均空気齢はどうやって求められるのか?と言う単純な質問に対する回答をご紹介したいと思います。空気齢の測定法は、① パルス(pulse)法、② ステップアップ(step-up)法、③ ステップダウン(step-down)法に分けられており、それぞれの測定法から測定される局所平均空気齢 τpは、式[1]~[3]によって求められる。

【1】パルス(pulse)法


\overline{\tau_{\mathrm{p}}} = \frac{\int_{0}^{\infty }t\cdot C_{\mathrm{p}}(t)dt}{\int_{0}^{\infty }C_{\mathrm{p}}(t)dt} \; \cdots \; [1]

ここで、τP [s]は局所平均空気齢、t [s]は時間、Cp(t ) [m3/m3]は時間 t の点 P でのトレーサー濃度である。


【2】ステップアップ(step-up)法


\overline{\tau_{\mathrm{p}}} = \int_{0}^{\infty }\frac{C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{p, up}}(t)}{C_{\mathrm{s}}}dt \; \cdots \; [2]

ここで、Cs [m3/m3]は給気口からのトレーサー濃度、Cp,up(t ) [m3/m3]はステップアップ(step-up)法における時間 t の点 P でのトレーサー濃度である。


【3】ステップダウン(step-down)法


\overline{\tau_{\mathrm{p}}} = \int_{0}^{\infty }\frac{t\cdot C_{\mathrm{p, dn}}(t)}{C(0)}dt \; \cdots \; [3]

ここで、Cp,dn(t ) [m3/m3]はステップダウン(step-down)法における時間 t の点 P でのトレーサー濃度、C (0) [m3/m3]は室内のトレーサー初期濃度である。




それでは、空間全体の平均空気齢<τ>は、どうやって求めるのか?




※ 事前準備:公式の作成


一定濃度のトレーサーガス供給を行う室空間の空間平均濃度の時系列変化は、式[4]が成立し、式[5]としても表すことができる。

V\frac{d \left< C\right>}{dt} = C_{\mathrm{s}}Q-C_{\mathrm{e}}(t)Q \; \cdots \; [4]

ここで、V [m3]は室容積、t [s]は時間、<C > [m3/m3]は室平均トレーサー濃度、Cs [m3/m3]は給気口からのトレーサー濃度、Ce(t ) [m3/m3]は時間 t の排気口でのトレーサー濃度、Q [m3/s]は給気流量である。

\int_{0}^{\infty }t^{n+1}\cdot \frac{d \left< C\right>}{dt}dt = \frac{Q}{V}\int_{0}^{\infty }t^{n+1}\cdot \left ( C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{e}}(t) \right )dt \; \cdots \; [5]
▶ 部分積分(Integration by parts)
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \left ( t^{n+1} \cdot F \right )' = \left ( n+1 \right )t^{n} \cdot F + t^{n+1} \cdot \frac{dF}{dt} \end{aligned}\end{array}
よって、
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \int_{0}^{\infty} t^{n+1} \cdot \frac{dF}{dt}dt &= \left [t^{n+1}\cdot F \right ]_{0}^{\infty } -(n+1)\int_{0}^{\infty} t^{n} \cdot F dt \\\ &= F_{\infty}(n+1)\int_{0}^{\infty}t^{n}dt -(n+1)\int_{0}^{\infty} t^{n} \cdot F dt \\\ &= (n+1)\int_{0}^{\infty}t^{n} \cdot \left (F_{\infty} - F \right )dt \end{aligned}\end{array}

上記の部分積分の概念に扱った Fを<C>に置き換えて整理すると、式[6]が得られる。

\int_{0}^{\infty} t^{n+1} \cdot \frac{d \left< C \right>}{dt}dt = (n+1)\int_{0}^{\infty }t^{n} \cdot \left ( \left< C_{\mathrm{\infty}} \right>- \left< C \right> \right )dt \; \cdots \; [6]

よって、式[5]と式[6]から、式[7]のように整理することも可能である。

(n+1)\int_{0}^{\infty }t^{n} \cdot \left ( \left< C_{\mathrm{\infty}} \right>- \left< C \right> \right )dt = \frac{Q}{V}\int_{0}^{\infty }t^{n+1}\cdot \left ( C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{e}}(t) \right )dt \; \cdots \; [7]


【1】パルス(pulse)法


パルス(pulse)法の場合、給気口に短時間トレーサーガスを注入することで、Cs = 0、C = 0 である。また、n = 1としておいて式[7]を整理すると、式[8]が得られる。

\int_{0}^{\infty} t \cdot \left< C \right> dt = \frac{Q}{2V}\int_{0}^{\infty }t^{2} \cdot C_{\mathrm{e}}(t) dt \; \cdots \; [8]

よって、室内空間全体の平均空気齢は、式[9]で求められる。この式は、排気口のトレーサー濃度のみ測定することで、室内空間全体の平均空気齢が確認できることを意味する。

\left< \bar{\tau} \right> = \frac{Q}{2V} \cdot \frac{\int_{0}^{\infty }t^{2}\cdot C_{\mathrm{e}}(t)dt}{\int_{0}^{\infty }C_{\mathrm{e}}(t)dt} \; \cdots \; [9]


【2】ステップアップ(step-up)法


ステップアップ(step-up)法の場合、給気口に一定のトレーサーガスを注入することで、Cs = C である。また、n = 0としておいて式[7]を整理すると、式[10]が得られる。

\int_{0}^{\infty} \left ( C_{s} - \left< C \right> \right ) dt = \frac{Q}{V}\int_{0}^{\infty }t \cdot \left ( C_{s} - C_{\mathrm{e}}(t) \right ) dt \; \cdots \; [10]

よって、室内空間全体の平均空気齢は、式[11]で求められる。この式も、排気口のトレーサー濃度のみ測定することで、室内空間全体の平均空気齢が確認できることを意味する。

\left< \bar{\tau} \right> = \int_{0}^{\infty }\frac{C_{\mathrm{s}}-\left< C \right>}{C_{\mathrm{s}}}dt = \frac{Q}{V} \int_{0}^{\infty } t \cdot \frac{C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{e}}(t)}{C_{\mathrm{s}}}dt \; \cdots \; [11]


【3】ステップダウン(step-down)法


ステップダウン(step-down)法の場合、給気口にトレーサーガスを注入しないことで、Cs = 0、C = 0 である。また、n = 0としておいて式[7]を整理すると、式[12]が得られる。

\int_{0}^{\infty} \left< C \right> dt = \frac{Q}{V}\int_{0}^{\infty }t \cdot C_{\mathrm{e}}(t) dt \; \cdots \; [12]

よって、室内空間全体の平均空気齢は、式[13]で求められる。この式も、排気口のトレーサー濃度のみ測定することで、室内空間全体の平均空気齢が確認できることを意味する。

\left< \bar{\tau} \right> = \int_{0}^{\infty }\frac{\left< C \right>}{C(0)}dt = \frac{Q}{V} \int_{0}^{\infty } t \cdot \frac{C_{\mathrm{e}}(t)}{C(0)}dt \; \cdots \; [13]


以上のことを全て整理すると、表1のように纏めることができる。

表 1. 各種方法における空気齢の算出式

  パルス法 ステップアップ法 ステッダウン法
局所空気齢
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{\int_{0}^{\infty }t\cdot C_{\mathrm{p}}(t)dt}{\int_{0}^{\infty }C_{\mathrm{p}}(t)dt} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \int_{0}^{\infty }\frac{C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{p, up}}(t)}{C_{\mathrm{s}}}dt \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \int_{0}^{\infty }\frac{t\cdot C_{\mathrm{p, dn}}(t)}{C(0)}dt \end{aligned}\end{array}
室平均空気齢
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{Q}{2V} \cdot \frac{\int_{0}^{\infty }t^{2}\cdot C_{\mathrm{e}}(t)dt}{\int_{0}^{\infty }C_{\mathrm{e}}(t)dt} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{Q}{V} \int_{0}^{\infty } t \cdot \frac{C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{e}}(t)}{C_{\mathrm{s}}}dt \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{Q}{V} \int_{0}^{\infty } t \cdot \frac{C_{\mathrm{e}}(t)}{C(0)}dt \end{aligned}\end{array}

ここで、t [s]は時間、Cp(t ) [m3/m3]は時間 t の点 P でのトレーサー濃度、Cs [m3/m3]は給気口からのトレーサー濃度、Cp,up(t ) [m3/m3]はステップアップ(step-up)法における時間 t の点 P でのトレーサー濃度、Cp,dn(t ) [m3/m3]はステップダウン(step-down)法における時間 t の点 P でのトレーサー濃度、C (0) [m3/m3]は室内のトレーサー初期濃度、Ce(t ) [m3/m3]は時間 t の排気口でのトレーサー濃度、V [m3]は室容積、Q [m3/s]は給気流量である。



Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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常の居住空間では、不均一放射、ドラフト、上下温度分布、床温度によって身体の局所に温熱的な不快を感じる問題が頻繁に起こる。代謝量が高い場合や衣服を着込んだ場合には、温熱環境に対して鈍感になり、局所不快感のリスクが少なくなる。また、居住者は全身温令感が中立よりも涼しい側にあるときにより局所の不快に対して敏感になり、逆に暖かい側にあるときには局所の不快に対して鈍感になる。

ここで定義される局部不快感の許容値は、着衣量が0.5 ~ 0.7 clo(※ 1 clo = 0.155 m2·K/W)の軽装で、代謝量が1.0 ~ 1.3 met(※ 1 met = 58 W/m2)程度の静穩状態を想定したものであり、また、全身温令感が中立に近いという前提条件で定義されている。表1は、局所不快感のそれぞれの要因に対して予想される不満足者率を示したものであり、これら全てを同時に満たす必要がある。

Table 1. Expected percent dissatisfied due to sources of local discomfort
Radiant Asymmetry Draft Vertical Air Temperature Difference Warm or Cool Floors
< 5% < 20% < 5% < 10%

【1】不均一放射(RADIANT TEMPERATURE ASYMMETRY)


部屋の各表面温度がそれぞれ異なる場合や、直達日射の影響により人体周囲の放射場は不均一となり、許容限界を超えると不快感を引き起こす。通常、特に天井が暖かい場合と、壁が冷たい場合に不快感が増す。放射の不均一性は、微小面放射温度のベクトル差を用いて表される。図1に暖かい天井(Ceiling Warmer than Floor)・冷たい天井(Ceiling Cooler than Floor)、暖かい壁(Wall Warmer than Air)・冷たい壁(Wall Cooler than Air)による不均一放射に対する不満足者率の関係を示す。暖かい壁面に関しては不快感が少なく、壁付きのパネルヒーターが有効であることがわかる。また頭寒足熱の言葉とおり、冷たい天井に関しても不快感は少ない。表2は、不均一放射の許容限界値を示したものである。

Fig 1. Local thermal discomfort caused by radiant asymmetry

Table 2. Allowable radiant temperature asymmetry
Ceiling Warmer than Floor Ceiling Cooler than Floor Wall Warmer than Air Wall Cooler than Air
< 5 °C < 14 °C < 23 °C < 10 °C

【2】ドラフト(DRAFT)


夏期には、気流を増やすことによって涼感を得ることができるが、空調時における必要以上に強い気流は局所の不快を引き起こすものであり、ドラフト(draft)を生ずる。ドラフトとは、「望まれない局部気流」と定義される。平均風速、空気温度だけではなく、乱れの強さ、代謝量、着衣量がドラフトによる不快感に影響を与えることが指摘されている。


ドラフトによる予想不満足者率(Draft Rate, DR)は、下式より定義される。この値が表1に示した「< 20 %」になるようにしなければならない。室温設定が高めの環境下でパーソナル空調などを採用するような場合には、居住者が気流速度を制御することが可能となるため、気流速度の許容限界はこの限りではない。

\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \textrm{DR} = &\left \{ \left ( 34-t_{a} \right ) \times \left ( v-0.05 \right )^{0.62} \right \} \\\ &\times \left ( 0.37 \times v \times T_{u} + 3.14 \right ) \end{aligned}\end{array}

【3】上下温度分布(VERTICAL AIR TEMPERATURE DIFFERENCE)


屋室上部が高温で床近傍が低温になるような室内空気の温度成層は、熱的な不快感を生ずる。図2に、居室上部が高温で床近傍が低温になるような場合の上下温度分布による不満足者率を示す。温度成層が逆転することはまれであり、むしろその場合は居住者にとって快適な条件となる。
室内上下温度分布について、ASHRAE Standard 55-20171[1] ANSI/ASHRAE Standard 55-2017 : Thermal environmental conditions for human occupancy, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, 2017.では在室者のくるぶしの高さと頭の高さの温度差が3 °C以内になることを推薦している。立位の状態では、くるぶしの高さが0.1 m、頭の高さが1.7 mということになる。椅座位の状態では、頭の高さは1.1 mである。室内上部からの温風による対流式暖房の場合には、上下の温度差が発現することが多いが、断熱・気密性能の高い居室であれば、冬期でもこの上下温度分布の推薦条件を満たすことができる。窓部で冷却された空気が床部に下降してくる現象(コールドドラフト)にも注意が必要である。

Fig 2. Local thermal discomfort caused by vertical temperature
differences


 【4】床温度(FLOOR SURFACE TEMPERATURE)


床表面温度が極端に高温あるいは低温である場合にも、局部の不快を引き起こす。靴を履いている居住者にとっては、床表面の仕上げ材の種類よりも床表面温度が特に重要である。ASHRAE Standard 55-2017では、室内の床温度は19 ~ 29 °Cの範囲(図3参照)とすることが推薦されている。これらの推薦値は、靴を履き、椅子に座ることを想定したものである。床暖房装置などがある家庭で床に直接座ったり寝たりする場合には、低温やけどの原因となるような体温よりも高い温度での使用は好ましくない。

Fig 3. Local thermal discomfort caused by warm and cool floors


[1] ANSI/ASHRAE Standard 55-2017 : Thermal environmental conditions for human occupancy, American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, 2017.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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々の人間は1日中、約12~20 kg(年齢・代謝・活動などにより異なる)の空気を摂取するものであり、空気がなくてはとうてい生きていくことはできない。空気は眼で見ることも手で掴むこともできないが、いくつかの分子から成り立っていて、体積が規定されれば重さも測れる。分子から成り立っているものであれば密度、比熱、熱伝導率、粘性係数なども持っており、周囲環境によってその物性値の変化を見ることは非常に面白い。ここでは、1気圧(1 atm)の空気に対し、温度変化による物性値の変化をグラフ化して学習する。

1気圧(1 atm)、20 °Cの環境で空気は、下記に示す物性値を持つ。


▶ 密度(Density, ρ):1.204 [kg/m3]
▶ 比熱(Specific Heat, CP):1,007 [J/(kg·K)]
▶ 熱伝導率(Thermal Conductivity, k):0.02514 [W/(m·K)]
▶ 熱拡散係数(Thermal Diffusivity, α):2.074×10-5 [m2/s]
▶ 粘性係数(Dynamic Viscosity, μ):1.825×10-5 [kg/(m·s)]
▶ 動粘性係数(Kinematic Viscosity, ν):1.516×10-5 [m2/s]
▶ 熱膨張係数(Thermal Expansion Coefficient, β):0.00341 [1/K]
▶ プラントル数(Prandtl Number, Pr):0.7309 [-]


空気の物性値は温度変化によって、下記に示すグラフのように変化していく。


ρ [kg/m3]

CP [J/(kg·K)]

k [W/(m·K)]

α [m2/s]


μ [kg/(m·s)]

ν [m2/s]

β [1/K]

Pr [-]


一方、空気に関しましてやさしく解説しているお勧めの一般教養図書は、小原先生が執筆した「100万人の空気調和1[1] 小原淳平:100万人の空気調和、オーム社、1975、ISBN: 978-4-274-08465-2.」である。興味のある方はぜひ、一読して見てください。


[1] 小原淳平:100万人の空気調和、オーム社、1975、ISBN: 978-4-274-08465-2.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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気の物性値は高度によっても変化する。ここでは、地表面(高度 0 m)の気圧を1 atmとし、気温を15 °Cとした場合、高度が高くなることに従って空気の物性値の変化をグラフ化して学習する。

1気圧(1 atm)、15 °C、高度 0 mの環境で空気は、下記に示す物性値を持つ。


▶ 圧力(Pressure, P):101.33 [kPa]
▶ 重力加速度(Gravity, g):9.807 [m/s2]
▶ 音速(Speed of Sound, c):340.3 [m/s]
▶ 密度(Density, ρ):1.225 [kg/m3]
▶ 粘性係数(Dynamic Viscosity, μ):1.789×10-5 [kg/(m·s)]
▶ 熱伝導率(Thermal Conductivity, k):0.0253 [W/(m·K)]
▶ 動粘性係数(Kinematic Viscosity, ν):1.460×10-5 [m2/s]


空気の物性値は高度によって、下記に示すグラフのように変化していく。


T [°C]

P [kPa]

g [m/s2]

c [m/s]


ρ [kg/m3]

μ [kg/m·s]

k [W/(m·K)]

ν [m2/s]


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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い前縁をもつ平板上の境界層の発達の概略を図1に示す。層流境界層は前縁から発達して厚くなっていくが、ある距離 xc 進むと遷移域を経て乱流になる。この xc は臨界レイノルズ数 Rec = Uxc / ν ≒ 5×105 で与えられる。ただし、代表速度 U は平板から十分離れた主流速度である。この臨界値は前縁の仕上げ状態や主流中の乱れなどの影響を受ける。

図1. 強制対流による平板上の速度境界層・温度境界層


速度境界層(δx)は流速 U = 0.99∙Uになる平板からの y 軸距離、温度境界層(δt)は温度差 T Ts = 0.99∙(TTs) となる平板からの y 軸距離として定義される。この境界層は層流流動(laminar flow)が乱流流動(turbulent flow)に変わるため、境界層近似と相似変数を用いて定常・非圧縮流動として検討すると、図1に示してような δxδt になる。



一方、熱伝達率に影響を及ぼす因子はきわめて多いが、普通、相似則を適用した無次元関数式で表される。熱伝達における代表的な無次元数(ヌッセルト数 Nu、レイノルズ数 Re、グラスホフ数 Gr、プラントル数 Pr)を下記に示す。

\textrm{Nu} = \frac{h L}{k} \; \cdots [1]
\textrm{Re} = \frac{u L}{\nu} \; \cdots [2]
\textrm{Gr} = \frac{g \beta l^3 \Delta t}{\nu^2} \; \cdots [3]
\textrm{Pr} = \frac{\nu}{a} \; \cdots [4]

ここに、ヌッセルト数 Nu は「熱伝達による伝熱量/熱伝導による伝熱量」、レイノルズ数 Re は「慣性力/粘性力」、グラスホフ数 Gr は「浮力/粘性力」、プラントル数 Pr は「運動量の拡散速度/熱の拡散速度」を表す無次元関数である。また、h は熱伝達率 [W/(m2·K)]、L は代表寸法 [m]、k は流体の熱伝導率 [W/(m·K)]、u は代表速度 [m/s]、ν は動粘性 [m2/s]、g は重力加速度 [m/s2]、β は体膨張係数 [K-1]、Δt は代表温度差 [K]、a は熱拡散率 [m2/s]である。


無次元関数式は一般に、強制対流では式[5]、自然対流では式[6]として表される。

\textrm{Nu} = f(\textrm{Re}, \textrm{Pr}) \; \cdots [5]
\textrm{Nu} = f(\textrm{Gr}, \textrm{Pr}) \; \cdots [6]

ただし、Nu には熱伝達率と同じく、局所値と平均値がある。局所値は熱伝達率h に局所熱伝達率 hx を、平均値は平均熱伝達率 hL を用いたものである。ここでは、局所ヌッセルト数(local Nusselt number)に対しては Nux を、平均ヌッセルト数(average Nusselt Number)に対しては NuL の記号を用いることにする。



平板における局所ヌッセルト数(local Nusselt number)及び平均ヌッセルト数(average Nusselt Number)は、平板に均一な温度条件を与えた場合と平板に均一な熱流束条件を与えた場合によって異なり1[1] John H. Lienhard IV, John H. Lienhard V. : A heat transfer textbook, Third Edition, pp.302-311, 2006.、まとめて表すと下記のようになる。


【A】局所ヌセルト数(local Nusselt number)


(1) 平板に「温度固定条件」を与えた場合
平板に均一な温度を与えた場合は、式[7]、[8]に示した実験・経験式を利用する。

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.332 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [7]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.0296 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [8]

(2) 平板に「熱流束固定条件」を与えた場合
平板に均一な熱流速を与えた場合は、式[9]、[10]に示した実験・経験式を利用する。

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.453 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [9]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\textrm{Nu}_{\textrm{x}} = \frac{h x}{k} = 0.0308 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{x}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [10]

また、全体平板における平均ヌッセルト数(average Nusselt number)は、局所ヌッセルト数を求める上記の式[7]~[10]を下記の式[11]に代入し、積分することにより求める。

h = \frac{1}{L} \int_{0}^{L} {h}_{\textrm{x}}dx \; \cdots [11]

【B】平均ヌセルト数(average Nusselt number)


(1) 平板に「温度固定条件」を与えた場合

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.664 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [12]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.0370 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [13]

(2) 平板に「熱流束固定条件」を与えた場合

① 層流(0.60 < Pr、Re < 5.0×105の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.906 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{1/2}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [14]

② 乱流(0.60 ≤ Pr ≤ 60、5.0×105 ≤ Re ≤ 107の場合)

\overline{\textrm{Nu}_{\textrm{L}}} = \frac{\overline{h} L}{k} = 0.0385 \cdot \textrm{Re}_{\textrm{L}}^{0.8}  \cdot \textrm{Pr}_{\textrm{x}}^{1/3} \; \cdots [15]

[1] John H. Lienhard IV, John H. Lienhard V. : A heat transfer textbook, Third Edition, pp.302-311, 2006.




以上の内容を踏まえ、平板に沿って流れる強制対流に対して2次元CFD解析(Abe-Kondoh-Nagano低レイノルズ数型k-ε乱流モデル)を行い、平板においてのヌッセルト数と熱伝達率を求めた結果を簡単に紹介する。


長さ L = 1.0 m の平板に沿う流れを図2、3のように2次元CFD解析モデルを作成し、流速 U = 1.0 m/s、T = 23.0 、P = 101,325 Paの境界条件を与え、解析を行う。図2には平板に均一な温度を与えた場合、図3には平板に均一な熱流速を与えた場合であり、平板秒面における温度変化、熱流変化、Nu数の変化、熱伝達率の変化を求め、実験・経験式と比較する。

図2. 温度固定条件

図3. 熱流速固定条件


図2に示した平板に「均一な温度」を与えた場合におけるCFD解析結果を下図に示す。

T [ºC]

qx [W/m2]

Nux [-]

hx [W/(m2·K)]


また、図3に示した平板に「均一な熱流速」を与えた場合におけるCFD解析結果を下図に示す。

T [ºC]

qx [W/m2]

Nux [-]

hx [W/(m2·K)]


以上の解析結果について詳細な説明が必要な方は、李研究室にお問い合わせください。


二重窓に適用した外気導入型エアフローウィンドウの断熱性能及び表面結露発生有無に関する数値的研究
李時桓,加藤信介
日本建築学会環境系論文集,第79巻(第695号),pp.63-72,2014.01. (ISSN: 1348-0685(Print), 1881-817X(Online))
https://doi.org/10.3130/aije.79.63


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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WBGT(WBGT指数)はWet-Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称で、暑熱環境下での行動に伴うリスクの度合(熱ストレス)を評価するために用いられる指標である。乾球温度 ta 、自然換気状態の湿球温度 tnwb 、グローブ温度 tg の測定値をもとに式[1]1[1] Dukes-Dobos, F., and A. Henschel. : The modification of the WBGT index for establishing permissible heat exposure limits in occupational work, HEW/USPHE/NIOSH Report TR-69, 1971., 2[2] Dukes-Dobos, F., and A. Henschel. : Development of permissible heat exposure limits for occupational work, ASHRAE Journal 9:57, 1973.を用いて算出される。
\mathrm{WBGT}=0.7t_{\mathrm{nwb}}+0.2t_{\mathrm{g}}+0.1t_{\mathrm{a}} \; \cdots [1]

ここに、WBGTはWBGT指数 [°C]、ta は乾球温度 [°C]、tnwb は自然換気状態の湿球温度 [°C]、 tg はグローブ温度 [°C]である。


式で分かるように、グローブ温度 tg は、空気温度、平均放射温度、気流速度に反応する反面、自然換気状態の湿球温度 tnwb は、空気湿度、空気温度、平均放射温度、気流速度に反応する。つまり、WBGT指数は人体が熱ストレスに影響を受ける環境要因4項目の関数である。


一方、式[1]は一般的に太陽放射が存在する場所で使われる。自然換気状態の湿球温度 tnwb とグローブ温度 tg は日光に暴露されるが、乾球温度 ta は日陰が必要である。密閉された室内での算出式は、式[1]で乾球温度 ta 項を削除し、グローブ温度 tg に0.3の重みを付け、単純化(式[2]参照)される。

\mathrm{WBGT}=0.7t_{\mathrm{nwb}}+0.3t_{\mathrm{g}} \; \cdots [2]

WBGT指数は産業環境における潜在的な熱ストレスを推定する場合に幅広く使用3[3] Davis, W.J. : Typical WBGT indexes in various industrial environments, ASHRAE Transactions 82(2):303, 1976.される。アメリカのNIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)では熱ストレスに対する許容作業限界(NIOSH 19864[4]NIOSH : Criteria for a recommended standard – Occupational exposure to hot environments, revised criteria, U.S. Dept. of Health and
Human Services, USDHHS (NIOSH) Publication 86-113, 1986.
、図1参照)に関する基準を開発し、ISO 72435[5] ISO 7243 : Ergonomics of the thermal environment – Assessment of heat stress using the WBGT (wet bulb globe temperature) index, 2017.として国際規格化されている。

図1. 許容作業限界(NIOSH 1986)


図1では、気候純化した標準労働者(体重70kg、体表面積1.8m2)を対象とし、時間当たり作業時間によるWBGT指数の許容作業限界を示す。この値は一般の透過性衣服(0.6 [clo])に適用するものであるが、それぞれの着衣量に対して加減する必要がある。例えば、アメリカの空軍(United States Air Force, USAF)では化学防護服、防弾服を着用した軍人に対して測定されたWBGT指数を6 [K]引き上げるように勧奨した。このような衣服は汗の蒸発に対する抵抗力を約3倍(完全不浸透性の場合はもっと高い)増加させ、WBGT指数を調整して皮膚からの蒸発冷却減少を補償しなければならない。


[1] Dukes-Dobos, F., and A. Henschel. : The modification of the WBGT index for establishing permissible heat exposure limits in occupational work, HEW/USPHE/NIOSH Report TR-69, 1971.
[2] Dukes-Dobos, F., and A. Henschel. : Development of permissible heat exposure limits for occupational work, ASHRAE Journal 9:57, 1973.
[3] Davis, W.J. : Typical WBGT indexes in various industrial environments, ASHRAE Transactions 82(2):303, 1976.
[4] NIOSH : Criteria for a recommended standard – Occupational exposure to hot environments, revised criteria, U.S. Dept. of Health and Human Services, USDHHS (NIOSH) Publication 86-113, 1986, Available from http://www.cdc.gov/NIOSH/docs/86-113/86-113.pdf
[5] ISO 7243 : Ergonomics of the thermal environment – Assessment of heat stress using the WBGT (wet bulb globe temperature) index, 2017.




WBGT指数の歴史(History of WBGT)、限界(Limitations of WBGT)などについてはBudd6[6] Grahame M. Budd : Wet-bulb globe temperature (WBGT) – its history and its limitations, Journal of Science and Medicine in Sports, Vol 11, Issue 1, p.20-32, 2008.の文献をご参照ください。


[6] Grahame M. Budd : Wet-bulb globe temperature (WBGT) – its history and its limitations, Journal of Science and Medicine in Sports, Vol 11, Issue 1, p.20-32, 2008. (DOI : https://doi.org/10.1016/j.jsams.2007.07.003)




日本には、日本産業標準として1999年に規格化(JIS Z 85247[7] JIS Z 8504 : 人間工学 – WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価 – 暑熱環境、1999.)されており、環境省8[8] 環境省:熱中症予防情報サイト、http://www.wbgt.env.go.jpではWBGT指数を「暑さ指数」と称している。特に、気象庁と環境省が連携して暑さ指数(WBGT指数)を基準とする新たな情報システムを構築し、2020年からWBGT指数が33°C以上になると予報された場合には「熱中症警戒アラート」を発表(2020年7月からは関東甲信地方のみ、2021年5月からは全国に拡大)している。


[7] JIS Z 8504 : 人間工学 – WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価 – 暑熱環境、1999.
[8] 環境省:熱中症予防情報サイト、http://www.wbgt.env.go.jp


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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気システムには様々なものがあるが、いずれについても室内空気中の汚染質濃度は物質収支、又は体積バランスを考えることにより数式で表現できる。ここでは代表的な換気システムを紹介し、室内空気中の汚染質濃度の予測法について概説する。

室内にある汚染質の総量に影響する要素は「① 室内に流入する汚染質量」、「② 室内から流出する汚染質量」、「③ 室内空気汚染質の発生量」であり、その物質収支、又は体積バランスを考えることで検討できる。

図1. 汚染質の体積バランス

図1に示す室内を一つの系として考え、室内の汚染質総量 CV [m3]の変化量である d(CV )、又はVdC に影響する要素を分類化すると、① 流入空気による輸送(+CoQdt )、② 流出空気による輸送(-CQdt )、③ 内部発生(+Mdt )に分けることができる。室内に入ったあるいは室内で発生した汚染質は瞬時に室内空気と完全混合するものと仮定(瞬時一様拡散)し、この体積バランスを整理すると、式[1]、[2]のような非定常濃度方程式が得られる。

室内にある汚染質の総量(dCV
=
+ 室内に流入する汚染質量(+ CoQdt 
– 室内から流出する汚染質量(- CQdt 
+ 室内空気汚染質の発生量(+ Mdt 

\begin{aligned}
VdC  &=  Mdt + C_{\mathrm{o}}Qdt - CQdt &\cdots \; [1] \\\ 
&= Bdt - CRdt &\cdots \; [2]
\end{aligned}

ここで、B は室内汚染質濃度を高めようとする項の和であり、CR は汚染質濃度を低めようとする項の和である。


1階微分方程式である式[1]、[2]を変数分離を行って解くと、式[3]、[4]が得られる。

\begin{aligned}
C_{\mathrm{t}} &= C_{\mathrm{o}}+(C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{o}})e^{-\frac{Q}{V}t}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-\frac{Q}{V}t})  \\\ 
&= (C_{\mathrm{s}}-\frac{M+C_{\mathrm{o}}Q}{Q})e^{-\frac{Q}{V}t} + \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q}{Q} &\cdots \; [3] \\\ 
&= (C_{\mathrm{s}}-\frac{B}{R})e^{-\frac{R}{V}t} + \frac{B}{R} &\cdots \; [4]
\end{aligned}

時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は、式[3]、[4]の時間 t を無限大にすることにより、式[5]、[6]で表すことができる。

\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{M}{Q}+C_{\mathrm{o}} &\cdots \; [5] \\\ 
&=\frac{B}{R} &\cdots \; [6]
\end{aligned}

【1】換気システム<A>


換気システム<A>(図2参照)は、室内への給気はすべて外気であり、排気はすべて外へ出すという最も簡単な場合である。一般住宅で窓を開けることによる換気は、この換気システムに入る。

図2. 換気システム<A>

換気システム<A>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[7]、[8]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[9]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQodt
② 流出空気による輸送:- CQodt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}} &\cdots \; [7] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} &\cdots \; [8]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}}{Q_{\mathrm{o}}} \; \cdots \; [9]
\end{aligned}

【2】換気システム<B>


換気システム<B>(図3参照)は、室内からのかなりの部分を再循環させ、外気と再循環空気はエアーフィルタを通してから室内に供給するもので、事務所などで見られる換気システムである。

図3. 換気システム<B>

ここで、エアーフィルタによる汚染質低減効果はエアーフィルタの捕集率をE としておけば、図4に示すように通過汚染質量をCQ (1-E ) として扱うことができる。

図4. エアーフィルタによる汚染質低減効果

換気システム<B>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[10]、[11]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[12]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [10] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} &\cdots \; [11]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}} \; \cdots \; [12]
\end{aligned}

【3】換気システム<C>


換気システム<C>(図5参照)は、外気を取り入れる時、外気中の粉じん、汚染質などをあらかじめプレフィルタで除去しておくもので、ほとんどの事務所やビルではこの換気システムを用いている。

図5. 換気システム<C>

換気システム<C>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[13]、[14]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[15]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [13] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} &\cdots \; [14]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}}  \; \cdots \; [15]
\end{aligned}

【4】換気システム<D>


換気システム<D>(図6参照)は、外気との空気交換は行わず、室内に設置した空気清浄機のみで換気効果を狙っているシステムである。

図6. 換気システム<D>

換気システム<D>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[16]、[17]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[18]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M &\cdots \; [16] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} &\cdots \; [17]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M}{Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}} \; \cdots \; [18]
\end{aligned}

【5】換気システム<E>


換気システム<E>(図7参照)は、換気システム<B>の室内に空気清浄機を設置した場合である。

図7. 換気システム<E>

換気システム<E>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[19]、[20]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[21]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [19] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}  &\cdots \; [20]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} } \; \cdots \; [21]
\end{aligned}

【6】換気システム<F>


換気システム<F>(図8参照)は、換気システム<C>の室内に空気清浄機を設置した場合である。

図8. 換気システム<F>

換気システム<F>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[22]、[23]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[24]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [22] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}&\cdots \; [23]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}} \; \cdots \; [24]
\end{aligned}

【7】換気システム<G>


換気システム<G>(図9参照)は、換気システム<F>の室内にすきま風も考慮した換気システムである。

図9. 換気システム<G>

換気システム<G>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[25]、[26]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[27]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt + CoQndt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdtCQndt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{n}} &\cdots \; [25] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} +Q_{\mathrm{n}} &\cdots \; [26]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{n}}}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}+Q_{\mathrm{n}}} \; \cdots \; [27]
\end{aligned}


[1] 石津嘉昭:室内空気汚染物の濃度式ならびに低減法についての一考察、空気調和・衛生工学会 論文集、6巻、17号、p.93-97、1981.
https://doi.org/10.18948/shase.6.17_93


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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気を行う第一の理由は、室間に清浄な空気を供給し、できるだけ効率的に汚染質を取り除くことである。空気中の汚染質は流動する空気と強くむずび付けられているので、部屋への新鮮空気の供給はある意味で、新鮮さを失った空気や汚染された空気を除去あるいは置換することととらえることができる。直感的には新鮮空気の供給と汚染質の除去は、本質的に同じことである。換気の性能は、基本的には着目するレベル以下に濃度を維持する能力によって評価される。図1において汚染質は、局所的発生源、あるいは点発生源Q から発生量 S で放出される。重要な地点は、センサー位置 P で示される居住者の頭部高さでの吸気であろう。

図1. 吸気濃度が低い場合、換気性能は良好(点発生源 Q、センサー位置 P




【1】局所清浄度指数


P における汚染質濃度の値は、公表されている当該汚染質の最大許容濃度(maximum allowable concentration, MAC)の値と比較するのが妥当である。換気風量の判定や他のシステムとの比較には適切に規準化された濃度を使用する方がもっと便利である。排気中の定常濃度は適切な参照値になる。図1の状況では、排気の定常濃度を用いて式[1]の局所清浄度指数(local air quality index)の定義が導かれる。

局所清浄度指数 εPc は、与えられた点で局所汚染質濃度の尺度であり、定常条件下の排気中の汚染質濃度 Ce と定常条件下の室内評価点 P における汚染質濃度 CP との比で定義される。

\varepsilon_{\textrm{P}}^{\textrm{c}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{C_{\textrm{P}}} \; \cdots \; [1]



【2】汚染質除去効率


図2に示すように、実際の居住者の位置が不明な場合や全体値のみに関心がある場合(センサーの位置 P が特に与えられてない場合)には、与えられた発生位置に対して部屋全体の効率が計算される。部屋全体の平均定常濃度が分かっている場合、式[2]の汚染質除去効率(contaminant removal effectiveness, CRE)の定義が導かれる。

汚染質除去効率 εc は、空気中の汚染質がどのくらい速く室内から除去されるかを表す尺度であり、定常条件下の排気中の汚染質濃度 Ce と定常条件下の室平均汚染質濃度 <C> との比で定義される。

\varepsilon^{\textrm{c}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{\left \langle {C} \right \rangle} \; \cdots \; [2]

図2. 点発生源 Q によって形成される濃度場


[★課題1] ここで、排気濃度 Ce はどうやっ求めるのか?

入れ替る空気量が qv の場合、給気 Cs と排気 Ce の間の濃度上昇は、定常状態では単純な質量収支により式[3]で表される。それとも、濃度測定器を用いて排気濃度を直接計測すればよいでしょう。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C_{\textrm{e}} = \frac{S}{q_{\textrm{v}}} + C_{\textrm{s}} \; \cdots \; [3] \end{aligned}\end{array}

[★課題2] 汚染質発生源位置が固定された場合、室平均濃度 <C> はどうやっ求めるのか?

汚染室除去効率は、汚染質発生源位置に対する室内平均濃度 <C >が必要である。ですから、汚染質発生源位置 Qからトレーサガス供給開始後、排気濃度の立ち上がりデータを計測(tracer step-up method)して <C >値を求めるか、それとも、定常濃度到達後、濃度の立下りデータを計測(tracer step-down (decay) method)して<C >値を求める。一方、実測による計測が難しいのであれば、CFD(computational fluid dynamics)解析を行って算出する。

(1) トレーサステップアップ法(tracer step-up method)による求め方

図3. トレーサステップアップ法によるターンオーバー時間の測定

・Q点からトレーサガスを室内に連続散布し、排気濃度上昇を計測する。
・排気濃度 Ce,up(t)は、初期値 0から最終的に定常濃度である Ce,sに到達される。
・ガスの供給量と排出量の差は、室内ガス残留量となる。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} V{\left<C\right>} &= Q\int_{0}^{\infty}\left [C_{e,s}-C_{e,up}(t) \right ]dt=Q \cdot C_{e,s} \tau_{to,up} \; \cdots \; [4] \\\ \therefore \varepsilon ^{c} &= \frac{C_{e,s}}{\left<C\right>}=\frac{V/Q}{\tau _{to,up}}=\frac{\tau _{n}}{\tau _{to,up}} \; \cdots \; [5] \end{aligned}\end{array}

(2) トレーサステップダウン法(tracer step-down (decay) method)による求め方

図4. トレーサステップダウン法によるターンオーバー時間の測定

・Q点からトレーサガスを室内に連続散布し、定常濃度到達後にガス供給を停止、その後の排気濃度減衰を計測する。
・排気濃度 Ce,dn(t)は、初期に定常濃度である Ce,sから最終的に 0になる。
・ガス排出量は、室内ガス残留量となる。

\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} V{\left<C\right>} &= Q\int_{0}^{\infty}\left [C_{e,dn}(t) \right ]dt=Q \cdot C_{e,s} \tau_{to,dn} \; \cdots \; [6] \\\ \therefore \varepsilon ^{c} &= \frac{C_{e,s}}{\left<C\right>}=\frac{V/Q}{\tau _{to,dn}}=\frac{\tau _{n}}{\tau _{to,dn}} \; \cdots \; [7] \end{aligned}\end{array}



【3】局所空気交換指数


時には、発生源が部屋中を動いたり、発生源の位置が不明な場合がある。その場合には図5に示されているように、ある一つのセンサー P に対して一様な汚染質発生源の分布が妥当性をもつかもしれない。これは局所空気齢の概念であり、式[7]で定義される局所空気交換指数に対応する。

局所空気交換指数 εPa は、特定の位置の状態を特徴つけるものであり、測定地点である室中の位置によって大きな値を取りうる。局所空気交換指数は、名目換気時間 τn と点 P での局所平均空気齢 τP との比で定義される。

\varepsilon_{\textrm{P}}^{\textrm{a}} = \frac{C_{\textrm{e}}}{C_{\textrm{P}}} = \frac{{\tau}_{\textrm{n}}}{\bar{\tau}_{\textrm{P}}} \; \cdots \; [7]

図5. 一様分布した発生源 Q によって形成される濃度場
【発生源は部屋全体に一様に分布し、濃度は点 P で測定される(局所空気齢の概念)。】




【4】空気交換効率


図6に示すように発生源 Q もセンサー P も特定されない場合でも式[8]で定義される空気交換効率による全体評価が可能である。

空気交換指数 εa は、室空気全体の最短の空気交換時間、つまり、名目換気時間 τn と実際の空気交換時間 τr との比で定義される。また、最小の空気交換時間 τn/2 と室平均空気齢<τ>との比としても定義することができる。

\varepsilon^{\textrm{a}} = \frac{{\left \langle {C} \right \rangle}_{\textrm{min}}}{\left \langle {C} \right \rangle} = \frac{{\tau}_{\textrm{n}}}{2{\left \langle {\bar{\tau}} \right \rangle}} \; \cdots \; [8]

図6. 一様分布した発生源 Q によって形成される濃度場
【汚染質発生源は一様に分布し、室の平均濃度にだけ着目する。これは室の平均空気齢の概念を導く。】




Reference – Elisabeth Mundt(ed.), Hans Martin Mathisen, Peter V. Nielsen, Alfred Moser: Ventilation Effectiveness, REHVA Guidebook No.2, REHVA, 2004.
[REHVA – Federation of European Heating and Air-conditioning Associations]

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内空間における汚染質の時系列変化を定量的に予測することは、室内空気環境を向上させるために非常に重要なことである。特に室内で発生する汚染質を除去するための換気量計算、室内空気を清掃する空気清掃機の効果検討、時々刻々変化する自然換気量の予測・評価に必要な技術であり、ここでは非定常濃度方程式の導出過程を簡単に説明する。

図1に単室における汚染質の体積バランスの概念図を示す。

 図1. 汚染質の体積バランス


図1に示す単室を一つの系として考えると、室内にある汚染質の総量は CV [m3]であり、その変化量は d(CV )で表される。この変化量 d(CV )は積の微分法則により、式[1]で表される。

d(CV) = CdV+VdC \; \cdots \; [1]

しかし、室容積 V [m3]は建築空間であるため膨張や収縮は起こらず、dV = 0なる。したがって、変化量は式[2]のように簡略化される。

d(CV) = VdC \; \cdots \; [2]

この VdC に影響を与える要因は以下の3つに分類でき、汚染質が室内で瞬時に空気と完全混合すると仮定(瞬時一様拡散)すれば、汚染質の体積バランスは式[3]として表される。
① 流入空気による輸送(+CoQdt
② 流出空気による輸送(-CQdt
③ 内部発生(+Mdt

VdC = -(CQ-C_{o}Q-M)dt \; \cdots \; [3]

式[3]は1階微分方程式であり、解くために変数分離を行うと、下記の式[4]に整理できる。

\frac{dC}{C-C_{o}-M/Q} = -\frac{Q}{V}dt \; \cdots \; [4]

変数分離を行った式[4]を用い、時刻t = 0の時の室内濃度をCsと置いて、t = 0 ~ t で積分すると式[5]と式[6]に表すことができる。

\int_{C_{s}}^{C}\frac{dC}{C-C_{o}-M/Q} = -\int_{0}^{t}\frac{Q}{V}dt \; \cdots \; [5]
log_{e}\frac{C-C_{o}-M/Q}{C_{s}-C_{o}-M/Q} = -\frac{Q}{V}t \; \cdots \; [6]

以上の式から室内濃度C に関する非定常濃度方程式を求めると、下記の式[7]として整理できる。

C = C_{o}+(C_{s}-C_{o})e^{-\frac{Q}{V}t}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-\frac{Q}{V}t}) \; \cdots \; [7]


【応用例題】
幅5 m、奥行8 m、高さ2.5 mの室に10人が同時に入室し、4時間滞在後にそろって退室した。この時の室内CO2濃度の推移を求めよ。ただし、外気中CO2濃度および室内CO2初期濃度は400 ppm、人体からのCO2発生量は20 L/h・人であり、この室の換気量は200 m3/hとする。


【回答】
この問題は式[5]を用いて検討すれば良いのですが、実際の計算では、N = Q / V、ΔC = CCo、 ΔCs = CsCo とおいて下記の式[8]に変換し、Nt の変化によるΔC の変化を求め、C = C0 + ΔC から計算する。

\Delta C = \Delta C_{s}e^{-Nt}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-Nt}) \; \cdots \; [8]

例題の条件からそれぞれの値を検討すると、
・ΔCs = 400 – 400 = 0 [ppm](初期濃度差)
M / Q = (20 × 10-3 × 10) / 200 = 1000 [ppm](定常濃度差)
N = Q / V = 200 / (5 × 8 × 2.5) = 2.0 [回/h](換気回数)
になり、下記の非定常方程式(式[9])が成り立つ。

\Delta C = 1000\cdot (1-e^{-2t}) \; \cdots \; [9]

式[9]を用いてt = 0 ~ 4 [h]の区間におけるC 値を求めると、下記のように計算でき、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。

時間 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00
t 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00
Nt 0.00 0.20 0.40 1.00 2.00 4.00 8.00
e-Nt 1.00 0.82 0.67 0.37 0.14 0.02 0.00
1-e-Nt 0.00 0.18 0.33 0.63 0.86 0.98 1.00
C 400 580 730 1030 1260 1380 1400

続けて4時間後、室内汚染質M が0になると、
・ΔCs = 1400 – 400 = 1000 [ppm](初期濃度差)
M / Q = 0 / 200 = 0 [ppm](定常濃度差)
N = Q / V = 200 / (5 × 8 × 2.5) = 2.0 [回/h](換気回数)
になり、下記の非定常方程式(式[10])が成り立つ。

\Delta C = 1000\cdot e^{-2t} \; \cdots \; [10]

式[10]を用いてt = 4 ~ 8 [h]の区間におけるC 値を求めると、下記のように計算でき、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。

時間 4.00 4.10 4.20 4.50 5.00 6.00 8.00
t 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00
Nt 0.00 0.20 0.40 1.00 2.00 4.00 8.00
e-Nt 1.00 0.82 0.67 0.37 0.14 0.02 0.00
1-e-Nt 0.00 0.18 0.33 0.63 0.86 0.98 1.00
C 1400 1220 1070 770 540 420 400

以上の結果を纏めてグラフ化すると、下記の図2のように示され、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。

 図2. 室内CO2濃度の時系列変化



Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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PMV(Predicted Mean Vote、予想平均温冷感申告)は、人間の感覚量から物理的考察に基づいて温熱快適性を表示したものであり、1967年にデンマーク工科大学のPovl Ole Fanger (July 16, 1934 – September 20, 2006)によって提唱された。人体の定常熱収支式(式[1]参照)と、温冷感や快適感に関する被験者実験結果を基に導出された温熱指標で、PMV=0の時、快適と感じる人の割合が最大になる。温熱環境の設計では、空調対象室の居住域全域でPMVが±0.5の範囲内に収まるように留意する必要がある。

{M}-{W}-{E}_{\textrm{d}}-{E}_{\textrm{sw}}-{E}_{\textrm{res}}-{C}_{\textrm{res}} = {K} = {R}+{C} \; \cdots \; [1]

ここで、M は代謝率 [W/m2]、W は外部仕事 [W/m2]、Ed は皮膚からの不感蒸泄 [W/m2]、Esw は発刊による皮膚からの潜熱損失 [W/m2]、Eres は呼吸による潜熱損失 [W/m2]、Cres は呼吸による顕熱損失 [W/m2]、K は皮膚表面から着衣状態の人体表面への伝熱量 [W/m2]であり、R は人体表面から外部環境への放射熱損失 [W/m2]、C は人体表面から外部環境への対流熱損失 [W/m2]である。



しかし、この式は単なる人体の熱収支式であり、これを待たすだけでは必ずしも快適とはならない。Fangerは被験者実験から得られたデータを基に、快適となる条件として生理学的変数である平均皮膚温tskと、発汗蒸発による放熱量Esw が次の式[2]、式[3]を満たす必要があるとしている。

{t}_{\textrm{sk}} = 35.7 - 0.028({M}-{W}) \; \cdots \; [2]
{E}_{\textrm{sw}} = 0.42({M}-{W}-58.15) \; \cdots \; [3]

式[1]のMW 以外の項を室温t [°C]、水蒸発分圧pa [kPa]、風速v [m/s]、平均放射温度tmrt [°C]、clo値Icl [clo]、平均皮膚温tsk [°C]などの関数として表し、式[2]、式[3]を用いて平均皮膚温tsk と発汗蒸発による放熱量Esw を消去すると、式[4]の関数形となる快適方程式が得られる。

{f}({M}-{W}, {I}_{\textrm{cl}}, {t}, {t}_{\textrm{mrt}}, {p}_{\textrm{a}}, {v} ) \; \cdots \; [4]

したがって、快適となる温熱環境はこの6変数(人間側2変数(M W [W/m2]、Icl [clo])、環境側4変数(t [°C]、tmrt [°C]、pa [kPa]、風速v [m/s]))の組み合わせとして無数に存在することになる。



快適条件から外した温熱環境では、快適方程式[4]の右辺が0にならず、ある値QL [W/m2]をとる。FangerはこのQL を人体に対する熱負荷と呼んで、この値が大きいほど不快感が増すと考え、多くの被験者(約1300 人)を使った実験結果を基に、式[5]のようにPMVと関係つけている。

PMV = (0.303e^{-0.036M}+0.028)Q_L \; \cdots \; [5]

この式のQL を具体的に書き表すと式[6]となり、この式を式[5]に入れることでPMVの値を計算することができる。

\begin{aligned}
{Q}_{\textrm{L}} = & [({M}-{W}) \\\ 
& -
3.05 \left \{ 5.73-0.007(M-W)-{p}_{\textrm{w}} ) \right \} \\\ 
& -
0.42 \left \{(M-W)-{p}_{\textrm{w}}-58.15 ) \right \} \\\ 
& -
0.0173M(5.87 - {p}_{\textrm{w}}) \\\ 
& -
0.0014M(34 - {t}) \\\ 
& -
3.96\times {10}^{-8}{f}_{\textrm{cl}}  \left \{ ({t}_{\textrm{cl}}+273)^{4} -({t}_{\textrm{mrt}}+273)^{4} \right \} \\\ 
& -
{f}_{\textrm{cl}} {h}_{\textrm{c}}({t}_{\textrm{cl}}-{t})]
\end{aligned}
 \; \cdots \; [6]

ここで、fcl [-]は着衣状態の体表面積と裸体表面式の割合、tcl [°C]は衣服表面温度、hc [W/m2K]は対流熱伝達率である。


※ ISO規格にはBASICコードも公開されているので、ご参照ください。
ISO 7730, 2005 : Ergonomics of the thermal environment — Analytical determination and interpretation of thermal comfort using calculation of the PMV and PPD indices and local thermal comfort criteria


一方、PMVの測定高さについて1点のみ計測する時は、椅座の人体に対しては床上0.6 mで、立っている人体に対しては1.0 mで測定する。3点測定する時は、椅座の場合、床上0.2, 0.6, 1.0 mで、立っている場合は、0.3, 1.0, 1.7 mの高さでPMVを求め、その平均値をとることをFangerは勧めている。



Reference – Thermal comfort: Analysis and applications in environmental engineering, 1970
[P. O. Fanger (July 16, 1934 – September 20, 2006)]

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ADPI(Air Diffusion Performance Index、空気拡散性能係数)は、冷・暖房された室内空間の快適状態を定量化するために開発された指標であり、有効ドラフト温度(Effective Draft Temperature、略してEDT)を基にして計算される。



EDT は、人体周りの気流移動と空気温度による生理学影響を組み合わせ、室内の各ポイントでの快適さを定量化したものである。冷却条件では式[1]を用いて計算されるが、Koestel and Tuve(1955)1[1] Koestel, A., and G.L. Tuve : Performance and evaluation of room air distribution systems. ASHRAE Transactions 61:533, 1955.の論文によると、Rydberg and Norback(1949)2[2] Rydberg, J., and P. Norback : Air distribution and draft, ASHVE Transactions 55:225, 1949.によって提案され、Straub et al. (1956)3[3] Straub, H.E., S.F. Gilman, and S. Konzo : Distribution of air within a room for year-round air conditioning – Part I. University of Illinois Engineering Experiment Station Bulletin 435, 1956.、Straub and Chen(1957)4[4] Straub, H.E., and M.M. Chen : Distribution of air within a room for year-round air conditioning – Part II. University of Illinois Engineering Experiment Station Bulletin 442, 1957.によって修正されたと述べられている。

{t}_{\textrm{ed}} = ({t}_{\textrm{x}}-{t}_{\textrm{c}})-8.0({v}_{\textrm{x}}-0.15) \; \cdots \; [1]

ここで、ted は有効ドラフト温度 [K]、tx はx地点における局所空気温度 [K]、tc は平均室内温度 [K]、vx はx地点における局所気流速度 [m/s]である。



Liu and Novoselac(2015)5[5] Liu, S., and A. Novoselac : Air diffusion performance index (ADPI) of diffusers for heating mode. Building and Environment 87:215-223, 2015.は、ASHRAE Standard 55で指定された予想平均温冷感申告(PMV)モデルに基づいて、暖房条件に適した有効ドラフト温度を提案した。暖房された空気の拡散が不十分で、高い垂直温度勾配が発生すると、給気流が停滞し、呼吸領域の許容換気量も確保できなくなる。

{t}_{\textrm{ed}} = ({t}_{\textrm{x}}-{t}_{\textrm{c}})-9.1({v}_{\textrm{x}}-0.15) \; \cdots \; [2]


冷房時におけるADPIは式[1]によって計算されるEDTが-1.7~+1.1 [K]の範囲内であるパーセンテージであり、暖房時におけるADPIは式[2]によって計算されるEDTが-2.2~+2.0 [K]の範囲内であるパーセンテージである。また、許容気流速度は0.36 m/s以下であることと定義されている。



[1] Koestel, A., and G.L. Tuve : Performance and evaluation of room air distribution systems. ASHRAE Transactions 61:533, 1955.
[2] Rydberg, J., and P. Norback : Air distribution and draft, ASHVE Transactions 55:225, 1949.
[3] Straub, H.E., S.F. Gilman, and S. Konzo : Distribution of air within a room for year-round air conditioning – Part I. University of Illinois Engineering Experiment Station Bulletin 435, 1956.
[4] Straub, H.E., and M.M. Chen : Distribution of air within a room for year-round air conditioning – Part II. University of Illinois Engineering Experiment Station Bulletin 442, 1957.
[5] Liu, S., and A. Novoselac : Air diffusion performance index (ADPI) of diffusers for heating mode. Building and Environment 87:215-223, 2015.


Reference – ASHRAE Handbooks 2019, Chapter 58. Room air distribution
[American Society of Heating and Air-Conditioning Engineers]

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力場では重い流体の中で軽い流体を上に押し出す純粋な力がある。流体に完全に若しくは部分的に沈んでいた物体が流体によって上に作用する力を浮力と言います。この浮力の大きさは物体によって排除された流体の重さと一致する。

{F}_{\textrm{bouyancy}} = {\rho}_{\textrm{fluid}} g {V}_{\textrm{body}}

ここで、Fbouyancyは物体に作用する浮力、ρfluidは流体(物体ではない。)の平均密度、gは重力加速度、Vbodyは流体に沈んでいる物体の体積(流体に完全に沈んでいた物体の場合は物体の総体積である。)である。


外力が作用しないと物体に作用する純垂直力は物体の重さと浮力の差である。

\begin{aligned}
{F}_{\textrm{net}} &= W - {F}_{\textrm{buoyancy}} \\\ 
&=  {\rho}_{\textrm{body}} g {V}_{\textrm{body}} -  {\rho}_{\textrm{fluid}} g {V}_{\textrm{body}} \\\ 
&=  ({\rho}_{\textrm{body}} - {\rho}_{\textrm{fluid}}) g {V}_{\textrm{body}} 
\end{aligned}

ここで、Fnetは物体に作用する純垂直力、Wは物体の重さ、ρbodyは物体の平均密度である。


このように流体に沈んだ物体は、その物体により排除された流体の重さほど軽くなる。これがArchimedesの原理として知られている。


浮力の効果を良く理解するため、水の中に卵を入れて見ましょう。卵の平均密度が水の密度より高い(新鮮)と、卵は容器のに沈んでしまいます。この状態で塩を水に入れ、塩水を作って見ると徐々に卵が浮き始めます。塩水は水より密度が高くなり、卵よりも密度が高いからでしょう。

浮きました!Eureka!! (( _ _ ))b..zzzZZ


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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Six types of tracer gas as listed in Table are used to measure the ventilation rate in a zone.


Type of gas Helium a Carbon dioxide b Sulfur hexafluoride c
Chemical symbol He CO2 SF6
Measurement method GC-TCD Infrared absorption & FID & GC GC-ECD Infrared absorption GC
Example of lower limit detection 300×10-6 0.1×10-6 70×10-6 0.001×10-6
Permissible concentration 5,000×10-6 1,000×10-6
Relative density against air [-] 0.138 1.545 5.302
Global warming potential (GWP) 1 23,900

Type of gas Perfluoro carbon d Ethylene e Nitrogen monoxide f
Chemical symbol CF4(PFC-14)
C2F6(PFC-16)
C2H4 N2O
Measurement method GC-ECD Infrared absorption & FID & GC Infrared absorption
Example of lower limit detection 0.1×10-6 0.1×10-6
Permissible concentration 25×10-6
Relative density against air [-] Example,
PFC-14: 3.06
PFC-16: 4.80
0.974 1.53
Global warming potential (GWP) Example,
PFC-14: 6,500
PFC-16: 9,200
310

<NOTE 1> In addition to those gases above, nitrogen, carbon monoxide, ethane, methane, isobutene, cyclobutanoctofluoride, Bromomethanetrifluoride, dichlorodifluoridemethane, and ichlorotetrafluoridemethane can be also used as tracer gas.
<NOTE 2> The GC in the table indicates general Gas Chromatography, the GC-TCD is the gas chromatography using Thermal Conductivity Detector and GC-ECD using Electron Capture Detector.
<NOTE 3> The Global Warming Potential is defined as relative green house effect potential per weight against carbon dioxide.
<NOTE 4> Infrared gas absorption includes both TS (transmission spectroscopy) and PAS (photoacoustic spectroscopy).


[a] Helium is chemically stable.
[b] CO2 is dissolved in water and can be adsorbed with building materials or furniture, and is not suited for precise measurement. However, if the measurement does not require critical accuracy, CO2 is often used. CO2 generated by occupants or any other internal source shall be taken into account. If this CO2 emission rate is not known, this tracer cannot be used.
[c] SF6 has a large global warming potential and should not be used in a large amount. SF6 is an inactive gas. If it is heated to 500 °C it generates toxic gases. Therefore, it should not be used in a space where a fan heater is used and SF6 flows through the heat source.
[d] PFC has a large Global Warming Potential and should not be used in large amounts.
[e] Ethylene is flammable and should be handled with a great care.
[f] N2O has a large Global Warming Potential and should not be used in large amounts. N2O is dissolved in water, and reacts with aluminium. It ignites at a high temperature. Great care must be exercised not to use it over its permissible concentration as it affects health.


Reference – ISO 12569:2017
[International Organization for Standardization]

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内濃度を常に目標値で一定にするため、トレーサーガスの注入量を制御して換気量を測定する方法である。室内濃度が均一に混合されなくても複数の注入点と測定点を設けることで、濃度分布を均一にすることができる。トレーサーガスの注入量を制御するには、特別な装置が必要であり、良く活用する測定機器はマルチガスモニターとサンプラーである。


適用される基本式は次式である。また、分かりやすく説明するためにバックグラウンド濃度を0と扱っている。

\begin{aligned}
0 = \frac{{dV}_{\textrm{gas}}({T})}{dt} = m(t)-{C}_{\textrm{target}}Q(t)
\end{aligned}

ここで、Ctargetは一定濃度法のための目標値 [m3/m3]、Q(t)t 時間における換気量 [m3/h]、m(t)t 時間におけるトレーサーガスの注入量 [m3/h]である。

\begin{aligned}
Q(t) = \frac{{m(t)}}{{C}_{\textrm{target}}}
\end{aligned}

Reference – ISO 12569:2017
[International Organization for Standardization]

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内で発生した代謝熱は、顕熱として対流と放射によって、そして潜熱として蒸発により、皮膚と肺を介して周囲環境へ放散される。潜熱は、体の熱を吸収して水分が肺や皮膚で蒸発する際の水の気化熱を表しており、冷たい表面で水分が凝縮すると、潜熱が放出される。吸入した空気の加温は顕熱の伝達を表し、肺で吸入された空気の温度上昇に比例する。体から熱損失の合計率は下記の式で表せられる。

[Mechanisms of heat loss from the human body]

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{body, total}} &= \dot{Q}_{\textrm{skin}}+\dot{Q}_{\textrm{lungs}} \\\ 
&= (\dot{Q}_{\textrm{sensible}}+\dot{Q}_{\textrm{latent}})_{\textrm{skin}}+(\dot{Q}_{\textrm{sensible}}+\dot{Q}_{\textrm{latent}})_{\textrm{lungs}} \\\ 
&= (\dot{Q}_{\textrm{conv}}+\dot{Q}_{\textrm{rad}}+\dot{Q}_{\textrm{latent}})_{\textrm{skin}}+(\dot{Q}_{\textrm{conv}}+\dot{Q}_{\textrm{latent}})_{\textrm{lungs}}
\end{aligned}

したがって、解析のみによる体からの熱伝達を決定するのは困難である。衣服は体からの熱伝達をさらに複雑にするため、実験データに頼らなければならない。定常状態における体からの総熱伝達率は変化する代謝熱発生率に等しく、軽い事務作業で約100 Wから重い肉体労働で約1000 Wまで変化する。


皮膚からの顕熱損失は、皮膚温度、環境、周囲の表面、および空気の流れに依存する。一方、潜熱損失は、皮膚の湿り度と環境の相対湿度に依存する。衣類は断熱材として機能し、顕熱損失と顕熱損失の両方を軽減させる。肺から呼吸までの熱伝達は呼吸頻度と肺の容積のみながず、皮膚からの熱伝達に影響を与える環境要因により異なる。


衣服を着た皮膚からの顕熱は、最初に衣​​服に伝わり、次に衣服から環境に伝わる。服を着た外面からの対流と輻射の熱損失は下記の式で表せられる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv}} &= {h}_{\textrm{conv}}{A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{clothing}}+{T}_{\textrm{ambient}}) \\\ 
\dot{Q}_{\textrm{rad}} &= {h}_{\textrm{rad}}{A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{clothing}}+{T}_{\textrm{surr}})
\end{aligned}

また、人の周囲のさまざまな表面の温度は異なり、Tsurrは平均放射温度を表しす。平均放射温度は、人体との放射熱交換と放射熱交換が等しくなる仮想温度である。ほとんどの衣類や建築材料は黒体であり、異なる温度のN面で構成されるエンクロージャーの平均放射温度は次式で求められる。

\begin{aligned}
T_{\textrm{surr}} \cong  {F}_{\textrm{person-1}}{T}_{\textrm{1}}+{F}_{\textrm{person-2}}{T}_{\textrm{2}}+\cdots +{F}_{\textrm{person-}N}{T}_{N}
\end{aligned}

ここで、Ti は表面iの温度であり、Fperson-i は人体と表面の間の形態係数(view factor)である。


総顕熱損失は、対流と放射熱損失を次式のように組み合わせることによって便利に表すことができる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv+rad}} &= {h}_{\textrm{combined}}{A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{clothing}}+{T}_{\textrm{operative}}) \\\ 
&= ({h}_{\textrm{conv}}+{h}_{\textrm{rad}}){A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{clothing}}+{T}_{\textrm{operative}})
\end{aligned}

ここで、作用温度(operative temperature)Toperative は対流と放射熱伝達を考慮して決定した周囲温度と平均放射温度の平均値であり、次式で求められる。

\begin{aligned}
T_{\textrm{operative}} &= \frac{{h}_{\textrm{conv}}{T}_{\textrm{ambient}}+{h}_{\textrm{rad}}{T}_{\textrm{surr}}}{{h}_{\textrm{conv}}+{h}_{\textrm{rad}}} \cong  \frac{{T}_{\textrm{ambient}}+{T}_{\textrm{surr}}}{2}
\end{aligned}

作用温度は、対流と放射熱伝達係数が等しい場合の周囲温度と周囲の表面温度の算術平均値である。また、熱快適性分析で使用される別の環境指標は、温度と湿度の影響を組み合わせた有効温度である。同じ有効温度の2つの環境は、温度と湿度が異なっていても、人の熱反応は同じくなる。


衣服の熱伝達は次式を用いて求められる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv+rad}} &= \frac{{A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{skin}}+{T}_{\textrm{clothing}})}{{R}_{\textrm{clothing}}}
\end{aligned}

ここで、Rclothing は(m2・K)/Wで表した衣服の単位熱抵抗であり、皮膚と衣服の外表面との間の伝導、対流、および放射の複合効果を含む。衣類の熱抵抗は通常、cloの単位で表され、1 clo = 0.155 (m2・K)/Wである。ズボン、長袖シャツ、長袖セーター、およびTシャツの熱抵抗は、1.0 clo、または0.155 (m2・K)/Wである。薄手のスラックスや半袖シャツなどの夏の服の断熱値は0.5 cloであるが、厚手のスラックス、長袖シャツ、セーターやジャケットなどの冬の服の断熱値は0.9 cloとなる。

そうすると総顕熱損失は、不便な衣服温度ではなく、次式のように皮膚温度で表すことができる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv+rad}} &= \frac{{A}_{\textrm{clothing}}({T}_{\textrm{skin}}+{T}_{\textrm{operative}})}{{R}_{\textrm{clothing}}+\cfrac{1}{{h}_{\textrm{combined}}}}
\end{aligned}

熱的快適状態では、体の平均皮膚温度は33 °Cであると観察されており、皮膚温度が±1.5 °C程度変動しても不快感はない。これは、体が服を着ているか、服を脱いでいるかにも関係ない。


皮膚からの蒸発熱または潜熱の損失は、皮膚と周囲空気の水蒸気圧、皮膚の湿り度との差に比例する。これは、汗の蒸発と皮膚を通る水拡散の複合効果によるもので、次式のように表すことができる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{latent}} &= \dot{\mu}_{\textrm{vapor}}{h}_{fg}
\end{aligned}

蒸発による熱損失は、皮膚が完全に濡れているときに最大となる。また、衣服は蒸発に対して抵抗力を持ち、衣服の体内での蒸発速度は衣服の透湿性に依存する。平均的な男性の最大蒸発速度は約1 L/h (0.3 g/s)であり、蒸発冷却速度の上限は730 Wである。暑い日のトレーニング中に1時間あたり2 kgの水を失う可能性があり、余分な汗は蒸発せずに皮膚表面から滑り落ちる。


呼吸中、吸い込まれた空気は周囲条件で入り、吐き出される空気は深部体温に近い温度でほぼ飽和状態のままとなる。したがって、体は対流による顕熱と肺からの蒸発による潜熱の両方を失う。これらは次式のように表すことができる。

[Metabolic heat generated in the body]

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv, lungs}} &= {\dot{m}}_{\textrm{air, lungs}}{c}_{p \textrm{, air}}({T}_{\textrm{exhale}}+{T}_{\textrm{ambient}}) \\\ 
\dot{Q}_{\textrm{latent, lungs}} &= {\dot{m}}_{\textrm{vapor, lungs}}{h}_{fg} = {\dot{m}}_{\textrm{air, lungs}}({\omega}_{\textrm{exhale}}+{\omega}_{\textrm{ambient}}){h}_{fg}
\end{aligned}

肺への空気摂取率は、代謝率に正比例する。呼吸による肺からの総熱損失率は、おおよそ次式のように表すことができる。

\begin{aligned}
\dot{Q}_{\textrm{conv+latent, lungs}} &= 0.0014{\dot{Q}}_{\textrm{met}}(34-{T}_{\textrm{ambient}}) \\\ 
& \; \; \; + 0.0173 {\dot{Q}}_{\textrm{met}}(5.87-{P}_{v \textrm{, ambient}})
\end{aligned}

ここで、Pv, ambientはkPaで表す蒸気圧である。

顕熱の割合は、重労働で約40%から軽作業で約70%まで変化する。残りのエネルギーは、潜熱の形で発汗することにより体から排出される。



Written by Yunus A. Çengel
[Professor, University of Nevada]

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次元化(Non-dimensional Parameters)とは、変数をある定数で割ることにより、次元をもたない変数に変えること。物理現象を数式化する場合、変数を実際の物理量で表すより代表物理量との比で表したほうが便利なことが多い。流体力学、熱伝達分野における良く使われる無次元数を下記に示す。



【1】Archimedes number


アルキメデス数(Archimedes number)は、水流のもつ浮力と運動量との割合を示す。

\begin{aligned}
\textrm{Ar} &= \frac {\rho_{s}gL^{3}\left ( \rho_{s}-\rho \right )}{\mu^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Gravitational force}}{\textrm{Viscous force}}
\end{aligned}


【2】Aspect ratio


アスペクト比(aspect ratio)は、矩形における長辺と短辺の比率である。

\begin{aligned}
\textrm{AR} &= \frac {L}{W}\; \textrm{or} \; \frac {L}{D}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Length}}{\textrm{Width}}\; \textrm{or} \;\frac{\textrm{Length}}{\textrm{Diameter}}
\end{aligned}


【3】Biot number


ビオ数(Biot number)は、伝熱に関する無次元量であり、固体内部の熱伝導と表面からの熱伝達量の比率である。

\begin{aligned}
\textrm{Bi} &= \frac {hL}{k}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Surface thermal resistance}}{\textrm{Internal thermal resistance}}
\end{aligned}


【4】Bond number


ボンド数(Bond number)は、浮力と表面張力の比を表す無次元量である。液中の液滴、気泡などの解析に用いられる。エトベス数(Eötvös number)とも呼ばれる。

\begin{aligned}
\textrm{Bo} &= \frac {g\left ( \rho _{f}-\rho _{v} \right )L^{2}}{\sigma _{s}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Gravitational force}}{\textrm{Surface tension force}}
\end{aligned}


【5】Cavitation number


キャビテーション数(Cavitation number)は、流体力学において、キャビテーションの解析に用いられる無次元数である。主にポンプ、水配管や油圧機器など、液体を用いる流体機械の解析で用いられる。

\begin{aligned}
\textrm{Ca} &= \frac {P - P_{v}}{\rho V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Pressure - Vapor pressure}}{\textrm{Inertial pressure}}
\end{aligned}


【6】Darcy friction factor


摩擦損失係数(Darcy friction factor)は、流体力学でのダルシー・ワイスバッハの式に使われる無次元数であり、配管流れや開水路流れでの流体エネルギーの摩擦損失を記述している。基本的な流れであり、産業的にも重要であるため、数多くの式が提案されている。

\begin{aligned}
f &= \frac {8 \tau_{w*}}{\rho V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Wall friction force}}{\textrm{Inertial force}}
\end{aligned}


【7】Drag coefficient


抗力係数(Drag coefficient)は、空気や水などの流体環境でのオブジェクトの抗力または抵抗を定量化するために使用される無次元の量である。

\begin{aligned}
C_{D} &= \frac {F_{D}}{1/2 \rho V^{2}A}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Drag force}}{\textrm{Dynamic force}}
\end{aligned}


【8】Eckert number


エッカート数(Eckert number)は、連続体力学における無次元数である。ある物体から十分離れた点における流体速度の二乗を、流体の比熱と、物体と流体間の温度差の積で割った値であり、物体周辺における圧縮性流体の挙動の研究に必要な定数である。

\begin{aligned}
\textrm{Ec} &= \frac {V^{2}}{c_{P}T}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Kinetic energy}}{\textrm{Enthalpy}}
\end{aligned}


【9】Euler number


\begin{aligned}
\textrm{Eu} &= \frac {\Delta P}{\rho V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Pressure difference}}{\textrm{Dynamic pressure}}
\end{aligned}


【10】Fanning friction factor


ファニング摩擦係数(Fanning friction factor)は、連続体力学計算でローカルパラメータとして使用される無次元数である。局所せん断応力と局所流動運動エネルギー密度の比率として定義される。

\begin{aligned}
C_{f} &= \frac {2\tau_{w}}{\rho V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Wall friction force}}{\textrm{Inertial force}}
\end{aligned}


【11】Fourier number


フーリエ数(Fourier number)は、過渡的な熱伝導を特徴付ける無次元数である。概念的には、拡散または伝導輸送速度と量の貯蔵速度の比である。

\begin{aligned}
\textrm{Fo} &= \frac {\alpha t}{L^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Physical time}}{\textrm{Thermal diffusion time}}
\end{aligned}


【12】Froude number


フルード数(Froude number)は、流体の慣性力と重力の比を表す無次元量。主に造波抵抗の分析のために用いられる。

\begin{aligned}
\textrm{Fr} &= \frac {V}{\sqrt{gL}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Inertial force}}{\textrm{Gravitational force}}
\end{aligned}


【13】Grashof number


グラスホフ数(Grashof Number)は、伝熱現象、物質移動現象に関して、流れ場における粘性力に対する浮力の相対的な影響を示す無次元量であり、自然対流を特徴付ける指標となる。

\begin{aligned}
\textrm{Gr} &= \frac {g \beta | \Delta T | L^{3} \rho^{2}}{\mu^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Bouyancy force}}{\textrm{Viscous force}}
\end{aligned}


【14】Jakob number


ヤコブ数(Jakob Number)は、熱面の過熱による顕熱と蒸発潜熱の比である。

\begin{aligned}
\textrm{Ja} &= \frac {c_{p}\left ( T - T_{sat} \right ) }{h_{fg}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Sensible energy}}{\textrm{Latent energy}}
\end{aligned}


【15】Knudsen number


クヌーセン数(Knudsen number )は、流体力学で用いられる無次元量のひとつであり、流れ場が連続体として扱えるか否かを決定するものである。

\begin{aligned}
\textrm{Kn} &= \frac {\lambda}{L}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Mean free path length}}{\textrm{Characteristic length}}
\end{aligned}


【16】Lewis number


ルイス数(Lewis number)は、熱と物質の移動速度の比を表す無次元の物性値である。熱と物質が同時に移動するような系の解析で重要なパラメータとなる。

\begin{aligned}
\textrm{Le} &= \frac {k}{\rho c_{p} D_{AB}}= \frac {\alpha}{D_{AB}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Thermal diffusion}}{\textrm{Species diffusion}}
\end{aligned}


【17】Lift coefficient


揚力係数(Lift coefficient)は、揚力体によって生成される揚力を、物体の周りの流体密度、流体速度、および関連する参照領域に関連付ける無次元係数である。

\begin{aligned}
C_{L} &= \frac {F_{L}}{1/2 \rho V^{2}A}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Lift force}}{\textrm{Dynamic force}}
\end{aligned}


【18】Mach number


マッハ数(Mach number)は、流体の流れの速さと音速との比で求まる無次元量である。 名称は、オーストリアの物理学者エルンスト・マッハ(Ernst Mach)に由来し、航空技師のヤコブ・アッケレートにより名付けられたものである。

\begin{aligned}
\textrm{Ma} &= \frac {V}{c}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Flow speed}}{\textrm{Speed of sound}}
\end{aligned}


【19】Nusselt number


ヌセルト数(Nusselt number)はドイツの ヴィルヘルム・ヌセルトに因む無次元量で、伝熱の分野で、対流による熱伝達と流体(静止している流体)の熱伝導の比率を示す。対流が生じていなければ Nu = 1 である。

\begin{aligned}
\textrm{Nu} &= \frac {Lh}{k}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Convection heat transfer}}{\textrm{Conduction heat transfer}}
\end{aligned}


【20】Peclet number


ペクレ数(Peclet number)は、連続体の輸送現象に関する無次元数である。流れによる物理量の移流速度の、適切な勾配により駆動される同じ量の拡散速度に対する比率と定義される。

\begin{aligned}
\textrm{Pe} &= \frac {\rho LV c_{p}}{k} = \frac {LV}{\alpha}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Bulk heat transfer}}{\textrm{Conduction heat transfer}}
\end{aligned}


【21】Power number


パワー数(Power number, ニュートン数)は、抵抗力と慣性力を関連を示す無次元数である。

\begin{aligned}
N_{P} &= \frac {\dot {W}}{\rho D^{5} \omega^{3}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Power}}{\textrm{Rotational inertia}}
\end{aligned}


【22】Prandtl number


プラントル数(Prandtl number)は、熱伝導に関する無次元の物性値であり、流体の動粘度と温度拡散率の比である。

\begin{aligned}
\textrm{Pr} &= \frac {\nu}{\alpha}= \frac {\mu c_{p}}{k}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Viscous diffusion}}{\textrm{Thermal diffusion}}
\end{aligned}


【23】Pressure coefficient


圧力係数(Pressure coefficient)は、流体の静圧を無次元で表した係数で、一様流の静圧からの変化分を一様流の動圧で割ることで得られる。

\begin{aligned}
C_{p} &= \frac {P- P_{\infty}}{1/2 \rho V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Surface pressure difference}}{\textrm{Dynamic pressure}}
\end{aligned}


【24】Rayleigh number


レイリー数(Rayleigh number)は、流体の自然対流による伝熱現象を特徴付ける無次元数で、浮力と熱拡散の比を表す。

\begin{aligned}
\textrm{Ra} &= \frac {g \beta | \Delta T | L^{3} \rho^{2} c_{p}}{k \mu}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Bouyancy force}}{\textrm{Viscous force}}
\end{aligned}


【25】Reynolds number


レイノルズ数(Reynolds number)は、流体力学において慣性力と粘性力との比で定義される無次元量である。

\begin{aligned}
\textrm{Re} &= \frac {\rho VL}{\mu} = \frac {VL}{\nu} 
\rightarrow \; \frac{\textrm{Inertial force}}{\textrm{Viscous force}}
\end{aligned}


【26】Richardson number


リチャードソン数(英: Richardson number)は、浮力と慣性力の比を表す無次元量である。この値が大きい場合には自然対流による流動が支配的になる。

\begin{aligned}
\textrm{Ri} &= \frac {L^{5}g \Delta \rho}{\rho \dot V^{2}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Buoyancy force}}{\textrm{Inertial force}}
\end{aligned}


【27】Schmidt number


シュミット数(Schmidt number)は、流体の動粘度と拡散係数の比を表す無次元量であり、伝熱現象におけるプラントル数に対応する物性値である。

\begin{aligned}
\textrm{Sc} &= \frac {\mu}{\rho D _{AB}}= \frac {\nu}{D _{AB}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Viscous diffusion}}{\textrm{Species diffusion}}
\end{aligned}


【28】Sherwood number


シャーウッド数(Sherwood number) は、物質移動操作に現われる無次元量であり、次式で定義される。

\begin{aligned}
\textrm{Sh} &= \frac {VL}{D _{AB}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Overall mass diffusion}}{\textrm{Species diffusion}}
\end{aligned}


【29】Specific heat ratio


比熱比(Specific heat ratio)は、定圧熱容量と定積熱容量の比である。熱力学の解析に用いるのは、それぞれ1モルあたりの定圧熱容量(定圧比熱)、定積熱容量(定積比熱)の比である。

\begin{aligned}
k &= \frac {c _{p}}{c _{v}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Enthalpy}}{\textrm{Inertial energy}}
\end{aligned}


【30】Stanton number


スタントン数(Stanton number)は、伝熱や自然対流の問題に対して用いられる、熱伝達率と熱容量の比を表す無次元量である。 

\begin{aligned}
\textrm{St} &= \frac {h}{ \rho c_{p} V}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Heat transfer}}{\textrm{Thermal capacity}}
\end{aligned}


【31】Stokes number


ストークス数(Stokes number)は、流体中を運動する微粒子について、流体への追従性を記述するために用いられる無次元量である。St << 1 ならば、微粒子の軌跡は流体の流線にほぼ一致すると考えて良い。

\begin{aligned}
\textrm{Stk} &= \frac {\rho _{p}D _{p}^{2}V}{18\mu L}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Particle relaxation time}}{\textrm{Characteristic flow time}}
\end{aligned}


【32】Strouhal number


ストローハル数(Strouhal number)は、流体力学において、流れにある振動現象の周波数を表す無次元量である。 

\begin{aligned}
\textrm{St} &= \frac {fL}{V}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Characteristic flow time}}{\textrm{Period of oscillation}}
\end{aligned}


【33】Weber number


ウェーバー数(Weber number)は、流体力学において慣性力と表面張力の比を表す無次元量である。

\begin{aligned}
\textrm{We} &= \frac {\rho V^{2}L}{\sigma _{s}}
\rightarrow \; \frac{\textrm{Inertial force}}{\textrm{Surface tension force}}
\end{aligned}


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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要換気量の算定の際は、室内を完全混合状態(perfect mixing)であると仮定することが多い。これば瞬時一様拡散とも言われ、室内にある汚染質(contaminant)が発生した場合、発生した瞬時に汚染質が空間全体に広がり、空間の至るところで濃度が同じになるような拡散状況のことを意味ずる。室内の平均的な汚染質濃度を予測したい場合には、計算が簡便なのでしばしば完全混合状態を仮定する。例えば、ある部屋で汚染質発生量が M [m3/s]であり、その汚染質の許容濃度が C [m3/m3]、取入れ外気の濃度が Co [m3/m3]であった場合、完全混合状態を仮定した必要な換気量 Q [m3/s]は下記の式[1]を用いて計算される。
Q = \frac{M}{C-C_{o}} \; \cdots \; [1]



【1】ガス状汚染質に関する必要換気量


ガス状汚染質(CO、CO2、HCHO、VOCsなど)に関する必要換気量は、図1に示す一つの系に対する体積バランス(体積収支)を考え、流入空気による輸送 CoQ [m3/s]と内部粉塵発生量 M [m3/s]が、流出空気による輸送 CQ [m3/s]に等しいとおけば、式[2]が成立される


Q = \frac{M}{C-C_{o}} \; \cdots \; [2]

図1. ガス状汚染質の体積バランス



【2】排湿に関する必要換気量


排湿に関する必要換気量は、図2に示す一つの系に対する質量バランス(質量収支)を考え、流入空気による輸送 ρXoQ [kg/s]と内部粉塵発生量 W [kg/s]が、流出空気による輸送 ρXQ [kg/s]に等しいとおけば、式[3]が成立される


Q = \frac{W}{\rho (X-X_{o})} \; \cdots \; [3]

図2. 湿気の質量バランス



【3】排熱に関する必要換気量


排熱に関する必要換気量は、図3に示す一つの系に対する熱量バランス(熱量収支)を考え、流入空気による輸送 ρCPToQ [W]と内部発熱量 H [W]が、流出空気による輸送 ρCPTQ [W]に等しいとおけば、式[4]が成立される


Q = \frac{H}{\rho C_{P}(T-T_{o})} \; \cdots \; [4]

図3. 熱量バランス



【4】粉塵に関する必要換気量


粉塵(粒子状汚染質)に関する必要換気量は、図4に示す一つの系に対する質量バランス(質量収支)を考え、流入空気による輸送 CoQ [mg/s]と内部粉塵発生量 D [mg/s]が、流出空気による輸送 CQ [mg/s]に等しいとおけば、式[5]が成立される


Q = \frac{D}{C-C_{o}} \; \cdots \; [5]

図4. 粉塵の質量バランス



Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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然換気量を計算するためには、「風力」、「大気基準圧と温度差駆動力」を学習する必要がある。本ページには建物における自然換気量を計算するため、いくつかの例題を示している。すべての例題を解き、設計、資格、実務などでの様々な問題解決にご活用ください。

自然換気量の計算原理は、下記のブログをご確認ください。
https://lee-lab.net/blog-contents-003




▶ 例題 01】速度4 m/sの気流の動圧はいくらか。また、この気流を2 m2の面でせき止めたときに作用する力はいくらとなるか。さらに、この力を重力で換算すると何 kgの力に相当するか。

(1) 速度4 m/sの気流の動圧 Pdは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{d}} &= \frac{\rho U^{2}}{2} \\\ &= \frac{1.2 \times 4^{2}}{2} \\\ &= 9.6 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(2) 2 m2の面でせき止めたときに作用する力 Fは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{d}} &= \frac{F}{A} \\\ F &= P_{\mathrm{d}} \cdot A \\\ &= 9.6 \times 2.0 \\\ &= 19.2\; [\mathrm{N}] \end{aligned}\end{array}
(3) 重力で換算すると何 kgの力に相当するかは、下式で求められる。
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} F &= mg \\\ m &= \frac{F}{g} = \frac{19.2}{9.8} \\\ &\cong 1.96 \; [\mathrm{kg}] \end{aligned}\end{array}


▶ 例題 02】 図に示すように通風を行っている住宅で、自然換気量を求めなさい。ただし、軒高風速、風圧係数、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 風上面の風圧力は【 3.78 】Paであり、風下面の風圧力は【 -2.72 】Paである。合成実効面積 αAは【 0.018 】m2であり、通風量は【 0.059 】m3/sである。

(1) 風上面 Waにおけるの風圧力 PWaは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{Wa}} = C_{\mathrm{Wa}} \frac{\rho U^{2}}{2} \; \cong 3.78 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(2) 風下面 Wbにおける風圧力 PWbは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{Wb}}  = C_{\mathrm{Wb}} \frac{\rho U^{2}}{2} \cong -2.72 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(3) 実効合成面積 αAは、「開口1、2の並列合成」と「開口1+2と開口3の直列合成」の組み合わせであり、下式で求められる。
 → 開口1、2の並列合成
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} αA_{1+2}  &= α_{1}A_{1} + α_{2}A_{2} \\\ &\cong 0.04 \; [\mathrm{m^{2}}] \end{aligned}\end{array}
 → 開口1+2と開口3の直列合成
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} &\; \left (\frac{1}{αA_{1+2+3}}\right )^{2} \\\ &= \left (\frac{1}{αA_{1+2}}\right )^{2} + \left (\frac{1}{α_{3}A_{3}}\right )^{2} \\\ &= \left (\frac{1}{0.04}\right )^{2} + \left (\frac{1}{0.02}\right )^{2} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \; αA_{1+2+3} \; \cong 0.018 \; [\mathrm{m^{2}}] \end{aligned}\end{array}
(4) 通風量 Qは下式で求めるか、
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} Q &=αA_{1+2+3} \cdot U  \cdot \sqrt{C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}} \\\ &=0.018 \cdot 3  \cdot \sqrt{0.7-(-0.5)} \\\ &\cong 0.059 \; [\mathrm{m^{3}/s}] \end{aligned}\end{array}
 それとも、下式で求められる。
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} Q &= αA_{1+2+3} \sqrt{\frac{2 \Delta P}{\rho}} \\\ &= 0.018 \cdot \sqrt{\frac{2 \cdot (3.78-(-2.70)}{1.2}} \\\ &\cong 0.059 \; [\mathrm{m^{3}/s}] \end{aligned}\end{array}


▶ 例題 03】図に示す軒高風速2 m/sの条件で、自然換気量を求めなさい。ただし、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 風上面の風圧力は【 1.44 】Paであり、風下面の風圧力は【 -0.72 】Paである。合成実効面積 αAは【 0.0057 】m2であり、通風量は【 0.0108 】m3/sである。

(1) 風上面 Waにおけるの風圧力 PWaは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{Wa}} = C_{\mathrm{Wa}} \frac{\rho U^{2}}{2} \; \cong 1.44 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(2) 風下面 Wbにおける風圧力 PWbは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} P_{\mathrm{Wb}}  = C_{\mathrm{Wb}} \frac{\rho U^{2}}{2} \cong -0.72 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(3) 実効合成面積 αAは、「開口2、3の並列合成」と「開口1と開口2+3と開口4の直列合成」の組み合わせであり、下式で求められる。
 → 開口2、3の並列合成
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} αA_{2+3}  &= α_{2}A_{2} + α_{3}A_{3} \\\ &\cong 0.05 \; [\mathrm{m^{2}}] \end{aligned}\end{array}
 → 開口1と開口2+3と開口4の直列合成
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} &\; \left (\frac{1}{αA_{1+2+3+4}}\right )^{2} \\\ &= \left (\frac{1}{α_{1}A_{1}}\right )^{2} + \left (\frac{1}{αA_{2+3}}\right )^{2} + \left (\frac{1}{α_{4}A_{4}}\right )^{2} \\\ &= \left (\frac{1}{0.006}\right )^{2} + \left (\frac{1}{0.050}\right )^{2} + \left (\frac{1}{0.020}\right )^{2} \end{aligned}\end{array}
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \therefore \; αA_{1+2+3+4} \; \cong 0.0057 \; [\mathrm{m^{2}}] \end{aligned}\end{array}
(4) 通風量 Qは下式で求めるか、
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} Q &=αA_{1+2+3} \cdot U  \cdot \sqrt{C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}} \\\ &=0.0057 \cdot 2  \cdot \sqrt{0.6-(-0.3)} \\\ &\cong 0.0108 \; [\mathrm{m^{3}/s}] \end{aligned}\end{array}
 それとも、下式で求められる。
\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned} Q &= αA_{1+2+3+4} \sqrt{\frac{2 \Delta P}{\rho}} \\\ &= 0.0057 \cdot \sqrt{\frac{2 \cdot (1.44-(-0.72)}{1.2}} \\\ &\cong 0.0108 \; [\mathrm{m^{3}/s}] \end{aligned}\end{array}


▶ 例題 04】室温が25 ºCになると空気密度は【     】kg/m3になる。

※ 空気密度は基準圧、基準温度における基準密度が分かれば、シャルル法則(Charles’ law)によって下式で求められる。 
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \rho_{\mathrm{o}} T_{\mathrm{o}} =  \rho_{\mathrm{i}} T_{\mathrm{i}} \end{aligned}\end{array}
1気圧、20 °Cにおける空気密度は約1.20 kg/m3であるため、25 °Cにおける空気密度は約1.18 kg/m3になる。 


▶ 例題 05】大気基準圧が 0 となる建物の部分を【     】という。

※ 大気基準圧が 0 となる建物の部分を中性帯(Neutral pressure level)という。

[References] Emswiler, J.E., Randall W.C.: The neutral zone in ventilation, American Society of Heating and Ventilating Engineers, Vol. 32, p.59-63, 1926.


▶ 例題 06】中性帯は開口部の実効面積の大きい方に【     】。



▶ 例題 07】 図に示す周囲が無風で、内外に温度差がある場合の温度差換気量を求めなさい。ただし、内外温度、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 換気駆動力は【 1.44 】Paであり、合成実効面積は【 0.019 】m2である。また、通風量は【 0.029 】m3/sとなる。

(1) 室内外温度差がある場合、温度差換気駆動力 ΔPは下式で求められる。 
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta P &= \frac{\rho g \Delta TH}{T} \\\ &= \frac{1.2 \cdot 9.8 \cdot 20 \cdot 1.8}{293.15} \\\ &\cong 1.44 \; [\mathrm{Pa}]\end{aligned}\end{array}
(2) 開口1と開口2の直列合成した実効開口面積 αAは下式で求められる
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
\alpha A_{合} &=  \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2}} \\\ &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{0.02} \right )^2 + \left ( \frac{1}{0.04} \right )^2}} \\\ &\cong 0.019 \; [\mathrm{m^{2}}]
\end{aligned}\end{array}
(3) 通風量 Qは下式で求められるか、
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
Q &= \alpha A_{合} \sqrt {\frac{2 g \Delta TH}{T}} \\\ &= 0.019 \cdot \sqrt {\frac{2 \cdot 9.8 \cdot 20 \cdot 1.8}{293.15}} \\\ &\cong 0.029 \; [\mathrm{m^{3}/s}]
\end{aligned}\end{array}
 それとも、下式で求められる。
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
Q &= \alpha A_{合} \sqrt {\frac{2 \Delta P}{\rho}} \\\ &= 0.019 \cdot \sqrt {\frac{2 \cdot 1.44}{1.2}} \\\ &\cong 0.029 \; [\mathrm{m^{3}/s}]
\end{aligned}\end{array}


▶ 例題 08】 図に示す周囲が無風で、内外に温度差がある場合の温度差換気量を求めなさい。ただし、内外温度、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 合成実効面積は【 1.789 】m2である。通風量は【 3.583 】m3/sとなる。

(1) 開口1と開口2の直列合成した実効開口面積 αAは下式で求められる。
\def\arraystretch{2.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
\alpha A_{合} &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2}} \\\ &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{2} \right )^2 + \left ( \frac{1}{4} \right )^2}} \\\ &= \frac{4\sqrt{5}}{5} \; [\mathrm{m^{2}}]
\end{aligned} \end{array}
(2) 通風量 Qは下式で求められる。
\def\arraystretch{2.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
Q &= \alpha A_{合} \sqrt {\frac{2 g \Delta TH}{T}} \\\ &= \frac{4\sqrt{5}}{5} \cdot \sqrt {\frac{2 \cdot 9.8 \cdot (20-0) \cdot 3.0}{293.15}} \\\ & \cong 3.583 \; [\mathrm{m^{3}/s}]
\end{aligned} \end{array}


▶ 例題 09】 図に示す軒高風速2 m/sの条件で、室温20 ºCに保たれている場合の自然換気量を求めなさい。ただし、内外温度、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 合成実効面積は【 0.0141 】m2である。通風量は【 0.0331 】m3/sとなる。

(1) 開口1と開口2の直列合成した実効開口面積 αAは下式で求められる。
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
\alpha A_{合} &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2}} \\\ &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{0.02} \right )^2 + \left ( \frac{1}{0.02} \right )^2}} \\\ &= 0.0141 \; [\mathrm{m^{2}}]
\end{aligned}\end{array}
(2) 風力による圧力差 ΔP風力は下式で求める。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta P_{風力} &= \frac{1}{2} \cdot \rho U^{2} \cdot (C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}) \\\ &= \frac{1}{2} \cdot 1.2 \cdot 2^{2} \cdot (0.6-(-0.2)) \\\ &\cong 1.92 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(3) 温度差による圧力差 ΔP温度差は下式で求める。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta P_{温度差} &= \frac{\rho g \Delta TH}{T} \\\ &= \frac{1.2 \cdot 9.8 \cdot (20-0)\cdot 1.8}{293.15} \\\ & \cong 1.44 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(4) 風力による通風方向と温度差による通風方向が同じであるため、圧力差はその合成値を取り、通風量 Qは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
Q &= \alpha A_{合} \sqrt {\frac{2 \cdot \Delta P}{\rho}} \\\ &= 0.014 \cdot \sqrt {\frac{2 \cdot (1.92+1.44)}{1.2}} \\\ & \cong 0.0331 \; [\mathrm{m^{3}/s}]
\end{aligned}\end{array}
※ 一方、この問題は下記の公式を使って計算しても同様な結果が得られる。
\def\arraystretch{2.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned}(C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}) \cdot \frac{1}{2} \rho U^{2} + \frac{\rho Hg \Delta T}{T} \\\ = \frac{\rho Q^{2}}{2}\cdot \left [ \left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2 \right ] \end{aligned}\end{array}


▶ 例題 10】 図に示す軒高風速2 m/sの条件で、室温20 ºCに保たれている場合の自然換気量を求めなさい。ただし、内外温度、各開口部の実効面積は図に示す値を用いるとする。

※ 合成実効面積は【 1.414 】m2である。通風量は【 1.030 】m3/sとなる。

(1) 開口1と開口2の直列合成した実効開口面積 αAは下式で求められる。
\def\arraystretch{2.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
\alpha A_{合} &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2}} \\\ &= \frac{1}{\sqrt{\left ( \frac{1}{2} \right )^2 + \left ( \frac{1}{2} \right )^2}} \\\ &= \sqrt{2} \; [\mathrm{m^{2}}]
\end{aligned}\end{array}
(2) 風力による圧力差 ΔP風力は下式で求める。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta P_{風力} &= \frac{1}{2} \cdot \rho U^{2} \cdot (C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}) \\\ &= \frac{1}{2} \cdot 1.2 \cdot 2^{2} \cdot (0.6-(-0.2)) \\\ &\cong 1.92 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(3) 温度差による圧力差 ΔP温度差は下式で求める。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta P_{温度差} &= \frac{\rho g \Delta TH}{T} \\\ &= \frac{1.2 \cdot 9.8 \cdot (20-0)\cdot 2}{293.15} \\\ & \cong 1.60 \; [\mathrm{Pa}] \end{aligned}\end{array}
(4) 風力による通風方向と温度差による通風方向が異なるため、圧力差はその差分値を取り、通風量 Qは下式で求められる。
\def\arraystretch{1.2}\begin{array}{cc}\begin{aligned}
Q &= \alpha A_{合} \sqrt {\frac{2 \cdot \Delta P}{\rho}} \\\ &= \sqrt{2} \cdot \sqrt {\frac{2 \cdot (1.92-1.60)}{1.2}} \\\ & \cong 1.03 \; [\mathrm{m^{3}/s}]
\end{aligned}\end{array}
※ 一方、この問題は下記の公式を使って計算しても同様な結果が得られる。
\def\arraystretch{2.5}\begin{array}{cc}\begin{aligned}(C_{\mathrm{Wa}}-C_{\mathrm{Wb}}) \cdot \frac{1}{2} \rho U^{2} - \frac{\rho Hg \Delta T}{T} \\\ = \frac{\rho Q^{2}}{2}\cdot \left [ \left ( \frac{1}{\alpha A_{1}} \right )^2 + \left ( \frac{1}{\alpha A_{2}} \right )^2 \right ] \end{aligned}\end{array}


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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物の単一開口部で生じる換気量は式[1]に示すよう、多重開口部で生じる換気量に1/3を掛けた値1[1] Brown W.G., Solvason K.R., 1962, Natural convection through rectangular openings in partitions Pt. 1: Vertical partitions, International Journal of Heat and Mass Transfer, 5, p.859-868.で計算可能となる。

Q = \frac {\alpha A}{3} \sqrt{\frac{2 \Delta P}{\rho}} \; \cdots \; [1]

ここで、Q [m3/s]は換気量、α [-]は流量係数、A [m2]は開口面積、ρ [kg/m3]は流体密度、ΔP [Pa]は室内外圧力差である。


※ 単一開口ではなく、多重開口における自然換気量の計算法は計算原理が異なるため、下記のブログをご確認ください。
https://lee-lab.net/blog-contents-003




【1】計算式の証明


図1に室内温度が室外温度より高い場合、温度差によって生じる単一開口部の風速勾配を示す。ここで、高さ方向z軸を変数とした圧力勾配は式[2]により定義され、摩擦のない理想の状態(frictionless)で外部へ流出される気流勾配は式[3]によって定義される。

\Delta P(z) = \Delta \rho gz \; \cdot \cdot \cdot \; [2]
V(z) = \sqrt{\frac{2\Delta P(z)}{\rho }} \; \cdot \cdot \cdot \; [3]

図1. 単一開口部における風速勾配


ここで、V(z)の平均風速を計算し、流出又は流入する開口部の面積を掛けると換気量が計算できる。また、V(z)は式[3]により、z1/2に比例するので、下記の式[4]を用いる。

V(z) \propto z^{1/2} \; \rightarrow  \;  \frac{V(z)}{V_{max}} = \left ( {\frac{z}{(h/2)}} \right ) ^{1/2}\; \cdot \cdot \cdot \; [4]

平均風速は、断面一次モーメント概念から積分して表すと便利となり、式[5]が得られる。

\def\arraystretch{2.5}\begin{aligned}
\bar{V} &= \frac{1}{(h/2)} \int_{0}^{h/2}V(z)dz \\\ 
&= \frac{V_{max}}{(h/2)^{3/2}} \int_{0}^{h/2}z^{1/2}dz \\\ 
&= \frac{V_{max}}{(h/2)^{3/2}} \frac{2}{3}(h/2)^{3/2} \\\ 
&= \frac{2}{3}V_{max} 
\end{aligned}
\; \cdots \; [5]

得られた式[5]の平均風速に、流出又は流入する開口部の面積(A/2)と、開口部で起きる摩擦損失を表す流量係数(α)を掛けて整理すると、換気量の計算式は式[6]となり、式[1]が証明される。ここで、流量係数(α)は、通常の開口部(ドア、窓)で0.6~0.7程度であり、ベルマウスでは概ね1となる。

Q=\alpha \frac{A}{2}\bar{V} = \frac{1}{3}\alpha A V_{max}=\frac{\alpha A}{3}\sqrt{\frac{2\Delta P}{\rho }} \; \cdot \cdot \cdot \; [6]

この式は温度差が換気駆動力になるため、式[6]の圧力差を温度差に置換して表すと式[7]となり、実用的に便利である。

Q= \frac{\alpha A}{3}\sqrt{\frac{\Delta T gh}{T_{i} }} \; \cdot \cdot \cdot \; [7]

ここで、ΔT [K]は室内温度Ti [K]と室外温度To [K]の室内外温度差である。



【2】粘性を考慮した様々な実験式


流体の粘性と熱の影響を考慮し、様々な実験、数値解析による研究が行われ、換気量の計算式が改善されている。Brown et al.(19632[2] Brown W.G., Wilson A.G., Solvason K.R., 1963, Heat and moisture flow through openings by convection, Journal of the American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers 5, p.49-54.は、室内外の圧力が同じで、中性帶が開口部の中間に位置すると仮定し、式[8]のような数学モデルを提案した。

Q = 0.343A \left ( gH \right )^{0.5} \cdot \left [ \frac{\rho_{i}-\rho_{o}}{\rho_{avg}} \right ]^{0.5} \cdot \left [ 1-0.498\left ( \frac{b}{H} \right ) \right ] \; \cdot \cdot \cdot \; [8]

Tamm(1966)3[3] Tamm W., 1966, Kalterveluste durch kuhlraumoffnungen, Kaltetechnik-Klimatisierung 18, p.142-144.、中性の高さを再計算し、式[8]にあるρavg代わりに、ρiを用いてBrown et al.が提案した数学モデルを式[9]のように改善した。

Q = 0.333A \left ( gH \right )^{0.5} \cdot \left [ \frac{\rho_{i}-\rho_{o}}{\rho_{i}} \right ]^{0.5} \cdot \left [ \left ( \frac{2}{1+\left (\rho_{o}/\rho_{i} \right )^{0.333}} \right ) \right ]^{1.5} \; \cdot \cdot \cdot  \; [9]

Fritzsche et al.(1968)4[4] Fritzsche C., Lilienblum W., 1968, Neue messengun zur bestimmung der kalterluste an kuhlraumturen, Kaltetechnik-Klimatiserung 20, p.279-286.、ベイン風速計(vane anemometer)を使った実験により、式[10]のように補正係数Kf,Lを追加してTammが提案したモデルを改善した。ここで、補正係数Kf,Lの導出式は式[11]に示すように計算される。

Q = 0.333K_{f,L} A \left ( gH \right )^{0.5} \cdot \left [ \frac{\rho_{i}-\rho_{o}}{\rho_{i}} \right ]^{0.5} \cdot \left [ \left ( \frac{2}{1+\left (\rho_{o}/\rho_{i} \right )^{0.333}} \right ) \right ]^{1.5} \; \cdot \cdot \cdot \; [10]
K_{f,L} = 0.48 + 0.004(T_{o}-T_{i}) \; \cdot \cdot \cdot \; [11]

Fritzsche et al.が提案したモデルは、室内に入ってくる流量と室外へ抜けていく体積流量が同じであると仮定して提示された。しかし、室内に流入した気流は、室内条件によって加熱、あるいは冷却されるので、体積流量の値を用いると誤差が発生するおそれがある。Gosney et al.(1975)5[5] Gosney W.B., Olama H.A.L., 1975, Heat and enthalpy gains through cold room doorways, Proceedings of the Institute of Refrigeration 72, p.31-41.は、一定の質量流量の係数を用い、式[10]のρoiの代わりにρioを使用して式[12]のようなモデルを提案した。

Q = 0.221 A \left ( gH \right )^{0.5} \cdot \left [ \frac{\rho_{i}-\rho_{o}}{\rho_{i}} \right ]^{0.5} \cdot \left [ \left ( \frac{2}{1+\left (\rho_{i}/\rho_{o} \right )^{0.333}} \right ) \right ]^{1.5} \; \cdot \cdot \cdot \; [12]

Pham et al.(1983)6[6] Pham Q.T., Oliver D.W., 1983, Infiltration of air into cold stores. Proceedings of the 16th international Congress of Refrigeration 4, p.67-72.Tammが提案したモデルを基に、実験により開口部の換気量に関する修正係数を0.68として求め、式[13]のようなモデルを提案した。

Q = 0.226 A \left ( gH \right )^{0.5} \cdot \left [ \frac{\rho_{i}-\rho_{o}}{\rho_{i}} \right ]^{0.5} \cdot \left [ \left ( \frac{2}{1+\left (\rho_{o}/\rho_{i} \right )^{0.333}} \right ) \right ]^{1.5} \; \cdot \cdot \cdot \; [13]

以上のように、自然対流によって発生する換気量を基に、室内からの流出熱量は室内・外温度差、開口部の高さと幅によって変化する。例えば、高さ3.0 m、幅1.2 mの開口部で、室内外温度差が10 °Cの場合には、約10 kWの熱量が失われる結果となる。



[1] Brown W.G., Solvason K.R., 1962, Natural convection through rectangular openings in partitions Pt. 1: Vertical partitions, International Journal of Heat and Mass Transfer, 5, p.859-868.
[2] Brown W.G., Wilson A.G., Solvason K.R., 1963, Heat and moisture flow through openings by convection, Journal of the American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers 5, p.49-54.
[3] Tamm W., 1966, Kalterveluste durch kuhlraumoffnungen, Kaltetechnik-Klimatisierung 18, p.142-144.
[4] Fritzsche C., Lilienblum W., 1968, Neue messengun zur bestimmung der kalterluste an kuhlraumturen, Kaltetechnik-Klimatiserung 20, p.279-286.
[5] Gosney W.B., Olama H.A.L., 1975, Heat and enthalpy gains through cold room doorways, Proceedings of the Institute of Refrigeration 72, p.31-41.
[6] Pham Q.T., Oliver D.W., 1983, Infiltration of air into cold stores. Proceedings of the 16th international Congress of Refrigeration 4, p.67-72.


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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気は、換気方法によって「機械換気」と「自然換気」に分けられる。「機械換気」は、給気と排気のどちらかにファンを使うのかによって「第1種換気方式」、「第2種換気方式」、「第3種換気方式」に分類される。また「自然換気」は、「第4種換気方式」と呼ばれる場合もあるが、換気駆動力によって「風力換気」と「温度差換気」に分類されるのが一般的である。

【1】第1種換気方式(Balanced Ventilation)


第1種換気方式は、給気・排気ともに機械で行う方式である。室内は、正圧にすることも、負圧にすることも可能であり、給排気量のエアバランスや気流速度のシビアなコントロールを求める高気密住宅、屋内駐車場、劇場、映画館、地下室、実験室などに用いられる。

図1. 第1種換気方式(給気側:機械、排気側:機械)


【2】第2種換気方式(Supply Ventilation)


第2種換気方式は、給気を機械で行い、排気を自然換気とする方式である。室内は、正圧に保たれることで、屋外からの汚染物質の侵入を防ぐ効果がある。外部からの粉じんの侵入を嫌うクリーンルーム、燃焼空気を確実に必要とするボイラー室などに用いられる。

図2. 第2種換気方式(給気側:機械、排気側:自然)


【3】第3種換気方式(Exhaust Ventilation)


第3種換気方式は、給気は自然換気とし、排気を機械で行う方式である。室内は、外部より負圧になることで、室内で発生する汚染質が周囲に漏れないことを目的として採用される。水蒸気や熱気が発生する厨房、臭気が発生するトイレなどに用いられる。

図3. 第3種換気方式(給気側:自然、排気側:機械)


【4】第4種換気方式(Natural Ventilation)


第4種換気方式は、給気・排気ともに自然換気で行う方式である。換気量が安定しにくいデメリットがあるが、室内発熱が大きな工場などに用いられる。

図4. 第4種換気方式(給気側:自然、排気側:自然)


※ 第4種換気方式である「自然換気」、その換気量の計算法については下記のブログをご確認ください。
https://lee-lab.net/blog-contents-003




Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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内空気と外気を交換することを換気と言う。室内汚染物質を室内空気とともに排出し、新鮮が行きを取り入れることによって室内空気の清浄度を維持することが換気の最大の目的である。室内汚染物質については、居住者の健康や快適性保持を目的として許容濃度が決められているので、濃度が許容値以下となることを目標に換気量が決められる。通常の居住環境下では、外気は十分に清浄なので、単に外気を取り入れるだけでよいが、幹線道路や工場近接などでは外気の汚染が無視できないので、取り入れる前に浄化を要する場合がある。

換気にはこのほかに、室内で居住者や燃焼器具によって消費されるO2(酸素)の供給、過剰な水蒸気を排除して室内湿度を適度に制御すること、室内の発熱を排出する排熱などの目的がある。また、大量の換気を行なうことによって夏場に建物を冷却したり、直接居住者が風を浴びて冷涼感を得る場合があり、これらを目的とした換気は、室内空気質の維持を目的とした場合と区別するために通風と呼ぶ。


 
換気
通風
漏気
英訳
Ventilation
Cross ventilation
Air leakage
目的
室内の空気を清浄に保つ
体感温度を下げ、涼感を与える
無し(すき間風)
気流の速さ
0.2 m/s以下
気流を感じない程度
1.0 m/s以上
気流を感じる
外部の風圧により変化
気流のつくり方
換気扇にて24時間の流れが作れる
窓・ドアの開放など
コントロールできない
気流の向き
居室→汚染質の向き
設計時に計画できる
人体に風が与えれば良い
気流の向きは気にしない
不明
換気回数
0.5~3.0回/h 程度
0~10回/h 程度
0~2.0回/h 程度

Written by Takashi Kurabuchi
[Professor, Tokyo University of Science]

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