建築熱・空気環境 2【CT#03】
2025-11-26▶ 非定常濃度変化と換気量測定
1. 図に示す記号を用いて、非定常濃度変化を表す式を導きなさい。
図に示めす単一室を一つの系として考え、室内の汚染質総量 CV [m3/m3]の変化量である d(CV )、又はVdC に影響する要素を分類化すると、① 流入空気による輸送(+C0Qdt )、② 流出空気による輸送(-CQdt )、③ 内部発生(+Mdt )に分けることができる。室内に入ったあるいは室内で発生した汚染質は瞬時に室内空気と完全混合するものと仮定(瞬時一様拡散)し、この体積バランスを整理すると、式[1]のような非定常濃度方程式が得られる。 \def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} VdC = -(CQ-C_{0}Q-M)dt \; \cdots \; [1] \end{aligned}\end{array}式[1]は1階微分方程式であり、解くために変数分離を行うと下記の式[2]に整理できる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \frac{dC}{C-C_{0}-M/Q} = -\frac{Q}{V}dt \; \cdots \; [2] \end{aligned}\end{array}変数分離を行った式[2]を用い、時刻t = 0の時の室内濃度をCsと置いて、t = 0 ~ t で積分すると式[3]と式[4]に表すことができる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \int_{C_{s}}^{C}\frac{dC}{C-C_{0}-M/Q} = -\int_{0}^{t}\frac{Q}{V}dt \; \cdots \; [3] \end{aligned}\end{array}\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} log_{e}\frac{C-C_{0}-M/Q}{C_{s}-C_{0}-M/Q} = -\frac{Q}{V}t \; \cdots \; [4] \end{aligned}\end{array}以上の式から室内濃度C に関する非定常濃度方程式を求めると、下記の式[5]として整理できる。
\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} C = C_{0}+(C_{s}-C_{0})e^{-\frac{Q}{V}t}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-\frac{Q}{V}t}) \; \cdots \; [5] \end{aligned}\end{array}
2. 換気量の測定法には定常濃度法、濃度減衰法、【 一定濃度法 】がある。
3. 幅5 m、奥行8 m、高さ2.5 mの室に10人が同時に入室し、4時間滞在後にそろって退室した。このときの室内のCO2濃度の推移を求めよ。ただし、外気中のCO2濃度および室内のCO2初期濃度は400 ppm、人体のCO2発生量は20 L/(h·人)、この室の換気量は200 m3/hとする。
この問題は式[5]を用いて検討すれば良いのですが、実際の計算では、N = Q / V、ΔC = C – C0、 ΔCs = Cs – C0 とおいて下記の式[6]に変換し、Nt の変化によるΔC の変化を求め、C = C0 + ΔC から計算する。
例題の条件からそれぞれの値を検討すると、\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta C = \Delta C_{s}e^{-Nt}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-Nt}) \; \cdots \; [6] \end{aligned}\end{array}
・ΔCs = 400 – 400 = 0 [ppm](初期濃度差)
・M / Q = (20 × 10-3 × 10) / 200 = 1000 [ppm](定常濃度差)
・N = Q / V = 200 / (5 × 8 × 2.5) = 2.0 [回/h](換気回数)
になり、下記の非定常方程式(式[7])が成り立つ。
式[7]を用いてt = 0 ~ 4 [h]の区間におけるC 値を求めると、下記のように計算でき、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta C = 1000\cdot (1-e^{-2t}) \; \cdots \; [7] \end{aligned}\end{array}
時間 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00 t 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00 Nt 0.00 0.20 0.40 1.00 2.00 4.00 8.00 e-Nt 1.00 0.82 0.67 0.37 0.14 0.02 0.00 1-e-Nt 0.00 0.18 0.33 0.63 0.86 0.98 1.00 C 400 580 730 1030 1260 1380 1400
続けて4時間後、室内汚染質M が0になると、
・ΔCs = 1400 – 400 = 1000 [ppm](初期濃度差)
・M / Q = 0 / 200 = 0 [ppm](定常濃度差)
・N = Q / V = 200 / (5 × 8 × 2.5) = 2.0 [回/h](換気回数)
になり、下記の非定常方程式(式[8])が成り立つ。
式[8]を用いてt = 4 ~ 8 [h]の区間におけるC 値を求めると、下記のように計算でき、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。\def\arraystretch{1.0}\begin{array}{cc}\begin{aligned} \Delta C = 1000\cdot e^{-2t} \; \cdots \; [8] \end{aligned}\end{array}
時間 4.00 4.10 4.20 4.50 5.00 6.00 8.00 t 0.00 0.10 0.20 0.50 1.00 2.00 4.00 Nt 0.00 0.20 0.40 1.00 2.00 4.00 8.00 e-Nt 1.00 0.82 0.67 0.37 0.14 0.02 0.00 1-e-Nt 0.00 0.18 0.33 0.63 0.86 0.98 1.00 C 1400 1220 1070 770 540 420 400
以上の結果を纏めてグラフ化すると、下図のように示され、室内CO2濃度の時系列変化が確認できる。
4. ある室の換気回数を測定するため、室内にCO2ガスを充満したのち放置し、室内にCO2ガス濃度を測定したところ下表を得た。これより換気回数を求めよ。ただし、外気中のCO2濃度は400 ppmとする。
t 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 CO2 4400 3580 2900 2240 1900 1580 1320 1080 940 820 740
▷ この問題はグラフで表して求めるものであり、解答の求め方は省略する。
[例題1] 室内のCO2発生量 M=0.3 m3/hである容積 75 m3の室の換気量 Q=150 m3/hであるとする。CO2外気濃度 Co=400 ppm、室の初期濃度 Cs=1,000ppmであったとして、2.5時間経過後までの濃度変化はどのようになるか。
▷ この問題は例題のため、解答の求め方は省略する。
[例題2] ある室でCO2ガスを放出し、濃度 3%になったときに止め、以後時間経過とCO2 濃度を測った。これより換気回数を求めなさい。但し、Co=400 ppm=0.04%とする。
t [分] 10 30 50 70 90 110 CO2 [%] 2.05 0.85 0.50 0.25 0.13 0.10
▷ この問題は例題のため、解答の求め方は省略する。
Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Tokyo University of Science]

