換気システムと濃度式

2020-12-13 オフ 投稿者: SHANY™
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気システムには様々なものがあるが、いずれについても室内空気中の汚染質濃度は物質収支、又は体積バランスを考えることにより数式で表現できる。ここでは代表的な換気システムを紹介し、室内空気中の汚染質濃度の予測法について概説する。


室内にある汚染質の総量に影響する要素は「① 室内に流入する汚染質量」、「② 室内から流出する汚染質量」、「③ 室内空気汚染質の発生量」であり、その物質収支、又は体積バランスを考えることで検討できる。

図1. 汚染質の体積バランス

図1に示す室内を一つの系として考え、室内の汚染質総量 CV [m3]の変化量である d(CV )、又はVdC に影響する要素を分類化すると、① 流入空気による輸送(+CoQdt )、② 流出空気による輸送(-CQdt )、③ 内部発生(+Mdt )に分けることができる。室内に入ったあるいは室内で発生した汚染質は瞬時に室内空気と完全混合するものと仮定(瞬時一様拡散)し、この体積バランスを整理すると、式[1]、[2]のような非定常濃度方程式が得られる。

室内にある汚染質の総量(dCV
=
+ 室内に流入する汚染質量(+ CoQdt 
– 室内から流出する汚染質量(- CQdt 
+ 室内空気汚染質の発生量(+ Mdt 

\begin{aligned}
VdC  &=  Mdt + C_{\mathrm{o}}Qdt - CQdt &\cdots \; [1] \\\ 
&= Bdt - CRdt &\cdots \; [2]
\end{aligned}

ここで、B は室内汚染質濃度を高めようとする項の和であり、CR は汚染質濃度を低めようとする項の和である。


1階微分方程式である式[1]、[2]を変数分離を行って解くと、式[3]、[4]が得られる。

\begin{aligned}
C_{\mathrm{t}} &= C_{\mathrm{o}}+(C_{\mathrm{s}}-C_{\mathrm{o}})e^{-\frac{Q}{V}t}+\frac{M}{Q}\cdot (1-e^{-\frac{Q}{V}t})  \\\ 
&= (C_{\mathrm{s}}-\frac{M+C_{\mathrm{o}}Q}{Q})e^{-\frac{Q}{V}t} + \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q}{Q} &\cdots \; [3] \\\ 
&= (C_{\mathrm{s}}-\frac{B}{R})e^{-\frac{R}{V}t} + \frac{B}{R} &\cdots \; [4]
\end{aligned}

時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は、式[3]、[4]の時間 t を無限大にすることにより、式[5]、[6]で表すことができる。

\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{M}{Q}+C_{\mathrm{o}} &\cdots \; [5] \\\ 
&=\frac{B}{R} &\cdots \; [6]
\end{aligned}

【1】換気システム<A>


換気システム<A>(図2参照)は、室内への給気はすべて外気であり、排気はすべて外へ出すという最も簡単な場合である。一般住宅で窓を開けることによる換気は、この換気システムに入る。

図2. 換気システム<A>

換気システム<A>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[7]、[8]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[9]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQodt
② 流出空気による輸送:- CQodt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}} &\cdots \; [7] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} &\cdots \; [8]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}}{Q_{\mathrm{o}}} \; \cdots \; [9]
\end{aligned}

【2】換気システム<B>


換気システム<B>(図3参照)は、室内からのかなりの部分を再循環させ、外気と再循環空気はエアーフィルタを通してから室内に供給するもので、事務所などで見られる換気システムである。

図3. 換気システム<B>

ここで、エアーフィルタによる汚染質低減効果はエアーフィルタの捕集率をE としておけば、図4に示すように通過汚染質量をCQ (1-E ) として扱うことができる。

図4. エアーフィルタによる汚染質低減効果

換気システム<B>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[10]、[11]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[12]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [10] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} &\cdots \; [11]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}} \; \cdots \; [12]
\end{aligned}

【3】換気システム<C>


換気システム<C>(図5参照)は、外気を取り入れる時、外気中の粉じん、汚染質などをあらかじめプレフィルタで除去しておくもので、ほとんどの事務所やビルではこの換気システムを用いている。

図5. 換気システム<C>

換気システム<C>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[13]、[14]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[15]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [13] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} &\cdots \; [14]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}}  \; \cdots \; [15]
\end{aligned}

【4】換気システム<D>


換気システム<D>(図6参照)は、外気との空気交換は行わず、室内に設置した空気清浄機のみで換気効果を狙っているシステムである。

図6. 換気システム<D>

換気システム<D>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[16]、[17]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[18]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M &\cdots \; [16] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} &\cdots \; [17]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M}{Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}} \; \cdots \; [18]
\end{aligned}

【5】換気システム<E>


換気システム<E>(図7参照)は、換気システム<B>の室内に空気清浄機を設置した場合である。

図7. 換気システム<E>

換気システム<E>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[19]、[20]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[21]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [19] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}  &\cdots \; [20]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} } \; \cdots \; [21]
\end{aligned}

【6】換気システム<F>


換気システム<F>(図8参照)は、換気システム<C>の室内に空気清浄機を設置した場合である。

図8. 換気システム<F>

換気システム<F>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[22]、[23]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[24]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}}) &\cdots \; [22] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}&\cdots \; [23]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}} \; \cdots \; [24]
\end{aligned}

【7】換気システム<G>


換気システム<G>(図9参照)は、換気システム<F>の室内にすきま風も考慮した換気システムである。

図9. 換気システム<G>

換気システム<G>における物質収支は下記のように表すことができ、BR は式[25]、[26]、時間が十分経過した後の平衡状態での室内濃度は式[27]で計算できる。
① 流入空気による輸送:+ CoQo(1-Ei )(1-Er )dt + CQr(1-Er )dt + CQc(1-Ec )dt + CoQndt 
② 流出空気による輸送:- CQodt – CQrdt – CQcdtCQndt
③ 内部発生:+ Mdt

\begin{aligned}
B &= M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{n}} &\cdots \; [25] \\\ 
R &= Q_{\mathrm{o}} + Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}} + Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}} +Q_{\mathrm{n}} &\cdots \; [26]
\end{aligned}
\begin{aligned}
C_{\mathrm{\infty}} &= \frac{B}{R} =  \frac{M+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{o}}(1-E_{\mathrm{i}})(1-E_{\mathrm{r}})+C_{\mathrm{o}}Q_{\mathrm{n}}}{Q_{\mathrm{o}}+Q_{\mathrm{r}}E_{\mathrm{r}}+Q_{\mathrm{c}}E_{\mathrm{c}}+Q_{\mathrm{n}}} \; \cdots \; [27]
\end{aligned}


[1] 石津嘉昭:室内空気汚染物の濃度式ならびに低減法についての一考察、空気調和・衛生工学会 論文集、6巻、17号、p.93-97、1981.
https://doi.org/10.18948/shase.6.17_93


Written by Sihwan Lee
[Associate Professor, Nagoya University]

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